おっさんのマストアイテムを間違えた。すると…。

新潮紙の世界で生きているのだから、当然雑誌ジャンキーである。昨今、電車の中で誰もがスマホいじりをしているが、僕は堂々と雑誌を広げる。若い娘さんたちにはきっとおっさんの中のおっさんと映っていることだろう。でも僕は雑誌業界を背負っている端くれだから冷たい視線に負けずにいつもガバーっと広げる。そんな僕がほぼ毎週購入しているひとつが『週刊文春』である。特集はすっ飛ばすこともしばしばあるのに付き合っているのは、好きなコラムがいくつか入っているからだ。

先日も出張のお供にと、新幹線への乗車直前に少々慌てて購入した。席に着いて袋から取り出すとありゃりゃ、やっちまった。「週刊新潮は、明日発売です」のCMが懐かしいコイツを手に入れていたのだ。やれやれ、無駄な出費かと思いきやこれが素晴らしい出会いとなった。このミスを神に感謝したほど素晴らしい写真と、それを撮影した人名を知ることが出来たのだ。巻頭いきなりのグラビアページで、企画名は『鉄路望景』とあり、遠慮気味なタイトルには『田植時』とある。なるほど、鉄道写真に季節を組み合わせた企画なんだなと、その1ページ目の胸のすくような写真にしばし目を奪われた。

そしてページをめくると、うるっとくるほどの感動的な見開き写真が展開されているじゃないか。水を張った田んぼが早朝の光を浴びてキラキラする中を、列車が影絵のように走っている。気持ちがなごむのは、田んぼという日本人の心を揺さぶる景色だからだろう。そして電車ってのはなんともいえない情緒があるもんだ。

こう来たらもう1ページ展開するだろうなとは、雑誌作りをしている人間ならきっと誰もが思うところだろう。そう思うとめくるのをしばし躊躇したのは、期待があまりにも大きく膨らんでいたからだ。めくると再びうるっときた。夕暮れ時の列車とその色を映す田んぼのなんと美しいことか。3枚の組み合わせも素晴らしく『週刊文春』を買い直さなければとの後悔はすっ飛び、保存版としてこれから長く持ち続ける一冊になった。

写真家の名は田中和義さんで、この仕事をしていて恥ずかしいことに知らない名前だった。こうした時に、ネット社会ってのは至極便利だ。名前をささっと入力すれば情報がドバーっと出てくるのだから。紙が不調なのも仕方ないなと思いつつ、このグラビアはネットじゃ楽しめないと開き直ったりしている微妙な気持ちの僕だった。そして嬉しい情報を見つけた。ちょうど今週より写真展があるじゃないか。しかもテーマは高野山ときた。これは行くぞ〜と、またまた神に感謝した僕だった。

まだ書店に並んでいる号だから、興味のある方はぜひ手に取ってみてほしい。って、なんだか他社の広告のようになっちまった(笑)。

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2件のコメント

    • ありがとうございます。ホントラッキーでしたが、写真展に行けるかが目下悩ましいところです。

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