出張が多く、日本中のアチコチで1人の夜を過ごすことが多い。そんな旅先でいい呑み屋と出くわすと大きな喜びに包まれる。反面、はずしてしまったときの後悔ったら、仕事に影響を及ぼすのではないかというほど落ち込んでしまう。先週末の出張では大成功を収めたのだった。
ここは神戸駅近くのこじんまりとした和食屋さんだ。割烹着姿のおかみさんと若い女性店員の2人だけで切り盛りしている。カウンターの上に数々のおばんざいが並んでいて、いくつかを選んでまずはそれでしばらく過ごした。ごぼうのきんぴらにふきの煮物、ポテトサラダをいただきゆったりと過ごす。店員さんとの会話も弾み、こうなるとついつい焼酎のペースが早くなる。メニューに書かれた数々を迷いながら眺めている楽しさったら、呑んべえでよかったと思わずニヤけてしまう。と、大成功の夜になったのは長い経験に裏付けられているのであ〜る。そのテクニック(!?)を伝授しよう・
まずは呑み屋街をじっくりと歩く。必ず2周はして決めるのだ。1周目では玄関をよく観察して、古くてもいいから清潔にしているところを絞り込む。盛り塩をしてあるところははずれが少ない。高そうに見える玄関だとしても、小料理とか季節料理なんて書いてあるところで、銀座の寿司屋みたいな値段のところはほとんど出くわすことはない。メニューが出ていたらもちろんチェックしながらゆったりと巡る。ノドを鳴らしながら練り歩くのも呑んべえの楽しみで、これまでの経験と照らし合わせながら選定する。店名も重要で、僕はカタカナをはずす。店名そのものは漢字でも、和風ダイニングとかってカタカナまじりのところも僕にはない。そして勇気をもってのれんをくぐる。この瞬間の緊張感は出張の達人でもいつも感じるもので、1人の夜の醍醐味でもある。こうして選んだ店がはずれるのは、若かりし日にはちょくちょくあったが近年ではほぼない。
会話が弾んでくると旅の者だと告げて、その地のことをアレコレ聞き出し、土地ならではの料理などをリクエストする。そんな風に店員さんと話していると、たいがい他のお客さんたちとも会話が始まって、ちょっとした宴となる。だが旅人は崩れちゃならず、あまり長っ尻は褒められたもんじゃない。「では、明日の朝が早いのでこの辺で」なんて、ちょっと気取ってみる。名刺があればいただき「また必ず寄らせてもらいます」なんて言いながら、記憶に留めてもらうようにこちらも名刺を差し出す。こうして全国から集めたいい店の名刺が山ほどあるが、2度3度と行ける店は少ない。
実はこの写真の店は数年前に1人で開拓したところだ。カウンターに座るとずいぶんとしばらくぶりに関わらず覚えていてくださった。重ねた人生の財産ともいえ、こんなときはおっさんであることを誇りに思う。呑んべえ万歳、昭和40年男万歳である。
行きつけの店と一見の店。男の人生にはどちらも必要。正に居酒屋巡りは巡恋歌。
たった一夜の恋もある・・・あっ、家族持ちとしてはちょっと失言? 閑話休題。
(^_^)最近、あぁ歳とったなぁ〜と 歳とるのもいいなぁ〜の両方感じてます。
居酒屋巡りは巡恋歌。いいセリフですね。
歳とるのもいいなあ同感です。
【北村類の酒場放浪記】今後も楽しみにしています。
はい、ありがとうございます。がんばって全国のいい呑み屋をご紹介します。