うおんたな?

魚棚「北村さん、今日はうおんたなに行きましょう」

「うおんたな…、ですか」

「行ったことないんですか?」

「はい」

「こんなに何度も明石に来ているのに…?」
てな会話が交わさたのは、出張での打ち合わせが終ってのことだった。連れて行ってくれたのは、兵庫県明石駅周辺の商店街だ。ここのことを『うおんたな』と呼ぶことを僕は知らず、これまでに何度も来ていた。魚棚との看板も何度も見ていたのに、これをうおんたなと読ませることを知らなかったのだ。というよりキチンと注視していなかったのであり、見てのとおりローマ字で読みの表記はしてある。注意力のなさが情けない(反省)。

ここを初めて訪れたのはかれこれ30年ほど遡る。『青春18きっぷ』を使って女の子と旅を企てた。知る人ぞ知る東海道線夜行列車の大垣行きに乗り込み貧乏旅行が始まった。この列車を初めて使ったのは、前年の大阪修行の時だった。しばらく向こうに住んで、その後もライブに呼ばれる度にこの列車で旅に出た。大阪から神戸に遊びにいったことがあり、僕にとっての最西の街だったから、もっと西へ行きたくなって選んだ地が倉敷だった。なんとも情緒ある響きに僕の心が震え、彼女を誘って出かけたのだった。

長い前置きになったが、その時に大垣で乗り換えた列車が明石行きだった。途中下車を楽しめるのが電車旅の醍醐味である。明石の街を2人でぶらついたのが、このうおんたなだったのだ。瀬戸内の新鮮な魚がピチピチとはねている魚屋が並び、それはそれはビックリさせられた。タコも生きたまま並んでいて、東京の魚屋では見たことのない光景と活気にあふれていたのだった。たまご焼きと呼ばれる明石風のたこ焼きを食べたのもこのときが初めてで、いい想い出となって心にしまわれている。

この商店街をうおんたなと呼ぶことを、まさかこの歳になって知ろうとは人生ってのは不思議なものだ。そして先日書いたとおり、瀬戸内の魚を満喫したのだった。それにしても、魚の棚とはなんとも素晴らしいネーミングじゃないか。明石ってホントいいところだから、機会があったらぜひ訪ねてみてはいかがだろう。魚好きにとっては天国じゃ!!

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