暮れということで、今年の10大ニュースで〜す。
あくまで僕個人が、今年一年間の本誌編集作業を通じて出会った事件(?)を不定期に連載しているぞ。
それでは、第6位。ドゥルドゥルドゥル〜、じゃん。
「日本橋から箱根芦ノ湖へ。徒歩完全制覇!!」
夏号のチャリンコ旅はひどい目にあったものの、読者さんからは好評であった。
ヤラセ一切なしの突撃企画は、やっぱり共感を生むのだね。
そのうえ、第7位で触れたとおり、絶対にマネの出来ない本づくりという意味でも
続けていこうということになり、チャリンコで最北端に対抗して
秋号では鈍行列車で最南端の旅に出た。
だがこれは、チャリンコに比べるとずいぶんと異なる仕上がりになった。
ものすごくいい時間を過ごせ、誌面としては読者さんに極上の旅を提案できた。
が、どうせ誌面に出るなら苦しんでいる姿の方が、見ている読者さんにはおもしろいだろうなと感じたのだった。
うーん、どうしたものか?
悩んでいるところに、編集金子から企画が持ち上がった。
東海道を弥次喜多のごとく旅しようというもので、徒歩で京都を目指そうというもの。
こいつは渡りに船ときた。1分かからず企画決定で
しかも編集およびライティングは金子が担当することになったから、
その分違うページのライティングが出来ると一瞬喜んだが、
よくよく考えれば4日間も拘束されるビックプロジェクトになったのである。
一気に京都を目指すのは我々2人はもちろんだが、タメ年男たちにも実現性が低すぎる。
いけるところまで行き、また次回以降繋げながら京都を目指すということであれば、
忙しいタメ年たちもやる気になるのではということで、初回は象徴的ゴールということで芦ノ湖を目指すことにした。
かつ、今回は特集の“呑んべえ万歳”に絡めることで、特集自体の厚みを出そうという作戦だ。
特集から連載が始まるのは好きなパターンであるが、逆も出来ちゃうのが天才の俺様だな(スンマセン)。
早朝の日本橋を出発して人のいない銀座を歩いていると、幸せ一杯の気持ちになった。
いやー、仕事とはいえありがたい時間だな。
前回の鈍行列車同様、コイツは最高の旅になるかと思ったのだが…。
まだ10kmもいかない都内で、右足のふくらはぎに違和感が。
今年1月のフルマラソンでのケガがぶり返してしまった。
痛みは少しずつひどくなっていき、4日間の行程を苦しめられたが、
まあなんとかもってくれたからよかったよ。
毎晩サロメチールたっぷり塗ったうえ、たっぷりの睡眠がよかったのかな。
この旅で知ったことは、箱根駅伝の2区以降は複雑にうねっているということだ。
権太坂だけがきついわけでなく、大小のアップダウンが繰り返される。
すべて駅伝コースをトレースしたわけではないものの、かなりの部分は歩くことが出来たうえでの大発見(!?)だったね。
駅伝の解説ゲストに、僕と金子を呼んだらすごくいい解説が出来ること間違いなしときたもんだ。
「ここは小さな登りがジワジワ来るんですよね」
「はいそうですね。画面ではわからないでしょうが、選手には相当厳しく感じられますね」
ときたもんだ。
なんて、箱根駅伝大好きのおっさん2人に女神は突然降りてきた。
2日目の戸塚中継所でのことだ。バカなポージングで撮影をおこなっていた我々2人であったが、
その場所が本当に中継所なのかは若干疑心暗鬼だった。
だが、ずいぶんとさがした結果ここしかないだろうという暫定的な撮影だったのだ。
と、一台のワンボックスが入ってきた。
なんでこんなところに停めるんだと思って眺めていたら、
見るからにスポーツマンの若者たちが降りて来るじゃないですか。
すかさず駆け寄り「ここは戸塚中継所ですか?」と聞くと、そうだとのこと。
さらに「箱根の選手ですか?」と聞くと、そうだとのこと。
すかさず「今、雑誌の取材で徒歩箱根駅伝(?)やっているんですけど、一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「えーっ、ありえねー」と、フレームに収まってくれたのが、P65のショットだ。
ふっふっふ、大学生をもってして。しかも駅伝部の人間からしても“ありえねー”俺たちだぜ。
「どこ大ですか?」
「青山です」
ふーん、青学とは名乗らないのかと思いながらも
「じゃあお正月は応援していますから、頑張ってください」と、僕たちは礼を言い旅を続けた。
何kmいったあたりだろうか、後ろからさっきの若者たちが走って抜きざまに「こんにちは、頑張ってください」と声をかけられた。
もうね、おじさん2人はこの一連の出会いに大感激で「青学応援しようね」と、すっかり大ファンになってしまう単純ぶりだった。
旅ってヤツは心の起伏が大きくなるから、こんな暖かさがすごく染み渡るんだよね。
“旅は道連れ世は情け”だね。
そうそう、道連れの金子が手前味噌だけどいい男なんよ。
今まで気が付かなかったところまで見えてくる。
こんな徒歩の旅は生まれて初めてで、読者のみなさんもほぼやったことがないでしょうけど、
自分の体しか使わない2人旅だ。そこで男同士が
腹をバッサバッサ割りながら進んでいくというのは、なんともいいものですよ。
人って深いものなんだなと、しみじみ気が付かされたのだ。
もっともそれは、ヤツという人間が魅力的だからで、だからいい文章を書くのだねえ。
“文は人なり”
こいつは僕の仕事上の座右の銘なんですが、
もっともっと努力して男をあげたいなと感じた第6位でした。