表紙で振り返る2014年。その壱。大滝詠一さんへの哀悼。

さあ、今日よりはこのブログの年越し特別企画の始まりだ。2014年も大騒ぎだった『昭和40年男』の表紙を振り返ってみよう。

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今年の『昭和40年男』は、初っぱなからいきなり大変なことになった。特集自体が『シティポップ』と、かなり意表をついたものだったと満足しながら完成させ、今年と同じように年内には刷り上げたのだった。印刷所に保管されたまま越年して、明けて早々に出荷されるからひどい年末進行を強いられるわけだが、無理をした分だけスッキリした気持ちでお正月を楽しめる…、はずだった。

表紙はご覧のとおり、大滝詠一さんの名作中の名作『A LONG VACATION』のバロディだ。山下達郎さんの『FOR YOU』でも作ってみて、表紙としておもしろいのがこっちだとの判断をした。このイラストを手がけた永井さんのインタビューを掲載するのはそもそも予定していて、表紙に使用したいとお願いしたところ快諾してくれたのだった。そんな諸々を経て細部に細かな工夫を施して仕上がり、コイツはおもしろいと胸を張った表紙だった。

そんな清々しい気持ちを一変させたのは、大晦日に入った副編・小笠原からの電話だった。「大滝さんが亡くなったそうです」と慌てた声で伝えてきた。僕は完全にオフモードに入っていて、情報を遮断していた。今思い出せばおかしいのだが、仕事モードにうまく戻らないほどガッチリとオフモードへとスイッチを入れていることを知った。「へっ」「なにが」「どうしよう」とか、どうにもならない対応がしばし続いたのだった。後日小笠原から、真っ昼間からすでに呑んでいるのか思ったと言われるほどのグダグダな僕だった。

やっと仕事モードに戻すことが出来て考えたのは、この本をはたして発売していいのか否かだった。このタイミングでバロディはあまりにも不謹慎なのではないかと。思案を重ねるも大晦日に誰に相談できるわけじゃなく、最悪出荷を取りやめることもやむを得ないと覚悟だけはしたのだった。

明けて4日より、各方面の方々と連絡を取りながら思案した。『A LONG VACATION』を作品としてしっかりと取り上げていることや、大滝さんへの強いリスペクトが込められていることから予定通り発行を決めた。結果的には、大滝さんのファンの皆様からもあたたかい声を多く寄せていただき、雑誌は好評を得たのだった。それは良しとして、あんなに複雑な心境に陥って過ごした大晦日は、一生忘れられない記憶になった。そんな波乱の幕開けだった2014年だ。

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2件のコメント

  1. あれから一年になるのですね。昨年暮れは驚きました。慌ててネット通販で『A LONG VACATION』と『EACH TIME』そして松田聖子の『風立ちぬ』のCDを即注文。昨年内になんとか届き、年末年始はずっと聞いていました。アナログ盤からCDへの切り替えをしてしまいました。『A LONG VACATION』は国内CD発売の第一号だとか。これも大滝さんの歴史に残る業績。
    達郎は自身のラジオ番組「サンデー・ソングブック」で追悼特集をヤルと言っていましたが、未だそれらしきことをやっていない。今年一年、大滝さんの曲は何曲かかけたが、特集はしていない。やはり手厳しい先輩との間に、蟠りが若干有ったのではないかと勘ぐってしまうのは私だけではないと思う。

    • そうなんです。1年は早いものですね。
      数々の偉業にあらためて感謝ですな。

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