ただ、自宅に何人もの人間があがりこんで
キレイとは言えないキッチンで
あれやこれやと丸一日(で終わるかどうかわからない)
ロケをするのである。
そんなことに唯一の聖域たる自宅を使うことに
抵抗があったかなかったかはわからないが、
逡巡している編集長。
「今、ウチにネコがいるんだよ」
「はあ」
「それが全盲のネコでな、えらく凶暴なわけよ」
「はあ」
「ヘタするとかみつくからな」
「はあ」
「ウチでやるのはアイツが問題なんだ」
「そんな理由ですか!?」
そう思ったのは秘密である。
どこかの部屋や小屋で
おとなしくしていてもらえばいいのでは?
そう思っていたが、なにかそうできない理由が
あるのかもしれないので黙っていた。
結局、代案があるわけでもなく、
編集長宅でやることとなり、
編集長もしぶしぶ、といった体で承知したのであった。
◆副編集長:小笠原
北海道生まれの35歳。仕事以外にこれといった趣味はないが、最近会社でコーヒーを豆から淹れることを覚えた。よりおいしく淹れるため、試行錯誤するのがちょっとした楽しみの一つになっている。