明治座で行なわれている『北島三郎最終公演』に出かけてきた。これまでもサブちゃんのライブは観たいと思っていたが、とくに理由なく見逃してしまっていたのは、一緒に話題にするような友人知人がいないことが大きいかもしれない。今回は最終公演だという情報を得ることが出来て、チケットを入手することにした。
2部構成でたっぷりと4時間以上の大ボリュームで、結論から言うともっと早くこの世界を知っていればよかったと後悔した。サブちゃんは昭和43年に初の座長を務めて以来46年に渡って、芝居と歌の2本立ての公演をコマ劇場や今回の明治座などのハコで継続してきたそうだ。去年の大晦日に『紅白歌合戦』から去ることを宣言し、そして今回は長年続けてきた舞台からも降りるという寂しい話だが、来月には78歳を迎えるのだから、むしろよくぞここまで続けてきたと讃えるべきだろう。
この後、大阪と福岡をツアーするそうなので詳しい内容にはふれないから、楽しみにしている方々もご安心して読み続けてください。まずは芝居から始まった。演目は『国定忠次』で、人情話はテンポよくまとまっていてあっという間の1時間45分だった。クオリティ高い芝居で、これだけで十分の価値があると感じたが、さらにライブがあるとはなんともお得だ。インターバルは35分と長く、この間は場内に出されている多くの店で思い思いに楽しめる。土産ものを買い込んだり、ビールを呑んだり、喫茶コーナーでリラックスするなんて方もいて、皆さんこの公演や明治座の通なのだろう。そんな楽しみに乗り遅れた僕は、次回のための予習に場内をブラブラと観察を続けたのだった。
さあ、いよいよライブだ。『ヒットパレード』とタイトルされているのがいい。昭和ですな。1つだけ後悔したのは、記念にと購入したプログラムにセットリストが書かれていたのだ。チラッとそれを見てしまいすぐ閉じたが、オープニングナンバーを知ってしまったのは大きく後悔した。まさかこの曲が頭とは、もし知らなかったら涙の量は倍になっていたことだろう。ご用心を。
130人の奏者やダンサーを従えているそうだ。それだけのスタッフがイキイキと待っているのは、サブちゃん自身の魅力なのだと確信した。偉大な親父が子供たちを強力に引っ張っているのだ。これが清々しく観ている者を感動へと誘う。それともうひとつ、サブちゃんのサービス精神がすごい。これでもか〜っとたたみかけるように次々に必殺技を繰り出す姿勢には恐れ入った。曲のほとんどをワンコーラスで終わらせてしまい、必ずあたたかな話をはさんで次の曲へといく。歌手だったらフルコーラス歌いたいのは当然の気持ちだろうが、それをスパッと封印して客に寄り添ってくれているのだ。素晴らしい舞台セットや音質、演奏力に演出などなど、もちろんすべてが行き届いていて魅力的だが、その真ん中でサブちゃんの“親父力”と“サービス精神”が図太い柱となっているから大きな感動を生む。1400人で埋め尽くされた会場に不満を持つものは1人もいなかっただろう。
長めのインターバルがあったとはいえ、終わったときは開演から4時間以上が過ぎていた。これを約1ヵ月間、ダブルヘッダーの日もこなしていく。完全休養日はたった1日で、言うまでもなく驚愕の78歳だ。今年は3月にストーンズのライブに行き、70歳のミックに現役バリバリの凄さを感じた。今回のサブちゃんからは78歳という年輪によるド迫力を知った。ミックはロック魂、サブちゃんはひと言で括ると親父魂が、それぞれのパフォーマンスの源泉であり、十分すぎるほどの活力になっていて年齢を凌駕しているのだろう。いやはや、負けちゃならんと元気になっちまいました。ありがとう、サブちゃん。大阪・福岡の同世代の皆さん、必見ですよ!!