もり蕎麦とざる蕎麦に悩む昭和40年男。

2大蕎麦メニューのもりとざる。調べてみると意外とおもしろいストーリーがあって、江戸まで遡る。蕎麦を汁に付けるのを面倒くさがった江戸っ子たちのために、ぶっかけが考案された。器ひとつでさっさと食べられるともてはやされた。コイツが流行ったから、それまでのせいろや皿に蕎麦を盛ってつゆに付けて食べるのを、もりと呼ぶようになった。ざるはそのままにざるに乗せたのが始まりだそうで、もりの高級バージョンのような扱いになり、つゆもコクの深いものにしてもりと区別したそうだ。今もざる汁を作っているところはあるそうだが、僕は出会ったことがない。江戸時代より続く更科蕎麦を食べさせるところで、甘汁と辛汁を出すところがあるのはなごりだろうか。

ざるそば37e3808047553cedb34daa9b1d7ab2a3-400x300現在では店によってまちまちではあるが、ざるは海苔がかかっているところが多くて、もりよりもやや量が多いところが多いのではないか。僕がよく通う近所の蕎麦屋もご覧のとおりだ。値段はもりの570円に対してざるが720円で、飲食デフレが続く昨今では高い部類となってしまった。だから選ぶのはいつも真剣だ。暑い日はざるを好んでいただく。海苔の香りがなんとなく涼しさを呼んでくれるからだ。蕎麦通に言わせると海苔は蕎麦の香りを邪魔するそうで、彼らによれば薬味もいらぬなんてのも聞こえてくる。そんなグルメなウンチクを、僕はまったく持ち合わせていない。

ラーメンを食べることが極端に減ったのは、舌のおっさん化なのだろうか。なにを食べようかとなると、まず思い浮かべるのが蕎麦だ。立ち食いはチェーン店がはびこってしまい味の画一化が進んでしまったが、一般の蕎麦屋は個人店が多いのがいい。いい面構えの古びた店を見つけては、ついついのれんをくぐってしまう。暇そうにタバコを吸いながら新聞を呼んでいる店主が僕の姿を見て厨房へと入っていき、奥さんと見受けられるおばちゃんがお茶を運んでくる。
「もりをください」
待つことほんの数分なのもいい。キッチリと締められた蕎麦にキリッと辛めのつゆ。しっかりと箸でほぐされたネギとわさびがたっぷりと小皿に乗っている。ズルズルっ。至福ですな。まずい蕎麦屋につかまることもなくはないが、決して腹を立てたりしない。店構えにだまされた未熟さを責める余裕が、おっさんには欲しいものだ。ああ、また蕎麦が食べたくなってきた。

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4件のコメント

  1. 聞く所によると・・・

    もり蕎麦 と ざる蕎麦 の違いは 元来 ツユの違いだそうです。

    砂糖が貴重だった時代
    砂糖を使って甘味をつけたツユと共に供されるのが ざる蕎麦
    甘味のない梅雨と共に供されるのが もり蕎麦
    ゆえに 値段が違ったのだそうです。

    そんな話を、近所の蕎麦屋のオヤジに聞いた事があります。

    • 中村さん、ありがとうございます。
      ざるはワンランク上のメニューだったようですね。

  2. もりですな(^^)
    ざるの海苔が蕎麦にくっついて食べにくくなるのが嫌なのよね(^^;
    温かいのは、たぬき最高。
    天婦羅だと重くて(*_*)

    • 浅野さん、ありがとうございます。
      僕もあたたかい汁蕎麦はたぬきをオーダーすることが多いです。天ぷらは値段も重いですしね。

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