書店に出かけるのは大切な調査であり、感覚を研ぎすませるためにも極めて重要な時間である。女性誌も含めて表紙をなめるように眺めて回り、気になるとパラパラ広げては自分のなかに飲み込むことを欠かさない…、なーんちゃって、ただ雑誌が好きなだけだ。つい先日は、こんなラインナップで購入してきた。ほぼ毎号買っている雑誌2冊と、たまたま見つけた『会長 島耕作』をレジへと運んだのだった。ここまではなんの話でもない。だがこの日レジで驚いたのが、右上の印刷物を渡しながらあの手この手で3つもの説明を受けたことだ。
まず1つ目は『空飛ぶ本棚』についてビッシリと書かれた小さなチラシだ。キャッチコピーは“本を買うと! 雑誌を買うと! デジタル版が読めちゃいます!”で、そのまんまのサービスである。専用アプリをインストールして、チラシに印字されているコード16ケタを入力すれば棚末で、購入した『東洋経済』がいつでもどこでも読める。これは今後1つの正攻法になっていくのではないかと思っているが、なにがどう動いていくかわからないのがデジタルマガジンの世界なので、『昭和40年男』はもうしばらく静観するつもりだ。
そして次なるは、20ページのフリーペーパー『honto plus』でコチラのキャッチコピーは“書店 通販 電子書籍のハイブリッド総合書店”となっている。印刷会社大手の大日本印刷発行で、彼らのような印刷業界はありとあらゆるスキームを模索している。紙こそ主戦場の印刷会社でありながら、デジタルの特性をうまく取り入れようとのトライがもう長く続いていて、出版社にとって組みやすいパートナーということもあって目が離せない。
そして最後が一番わかりやすい。レジの横に置かれた長机に投票箱とペンが並んでいて、超アナログな昔ながらのキャンペーンだ。タイトルは『祭』になるのかな。キャッチコピーなのかタイトルなのかが微妙な“美食の夏! 当てよう! dancyu selection 絶品お取り寄せ! プレゼント”は、まさしく直球ストレートじゃないか。税込みで1,000円以上の会計につき1枚の応募用紙がもらえる。このアンケートに答えると抽選で、総額1,000千万円、総勢1,000名にドーンと当たる。個人情報をガンガン書き込んで投票箱に入れるのは、今のご時世ではむしろ快感である。僕はズバリ、北海道の浜茹で毛蟹を狙った。皆さんもドシドシ書店に出かけて投票したらどうだ。出来れば毛蟹以外で(笑)。
それにしてもさすがは僕が愛する雑誌『dancyu』である。こんなアナログキャンペーンは大賛成で、おっさんはうれしくなった。一方で、展開している書店は大変だ。3つの提案を丁寧に説明する店員さんはご苦労で、つき合うユーザーサイドも3つくらいの時間が限界のような気がした。これ以上長いと逆に客を離しかねない。難しいところだ。
本が売れない時代だからこそ、努力を繰り返している書店さんのご苦労に応えるためにも、おもしろい『昭和40年男』をお届けしなければな。