「軍人将棋」で盛り上がったあの日。

軍人将棋小学生のある日のこと、親父が僕に金を渡しながら「軍人将棋を買って来い」と命じた。将棋が大好きな親父のことだからその一種だろうとあまり期待はしなかったが、なにかを買い与えてくれるなんてのは極々珍しいことだから喜んで出かけた。買ってきてみると、将棋と名乗ってはいるもののどちらかといえばゲーム性の高い玩具で、僕は弟とともに喜んで受け入れた。昭和40年男にどれほど浸透しているのだろう。皆さんコレで遊びましたか?

ものすごく安っぽい黄色とオレンジの駒と升目が印刷されている紙が入っている。駒は大将から少尉までの位の記された駒と、それ以外にヒコーキ、タンク、スパイ、地雷、騎兵などの特殊な駒があり、これらを紙(盤!?)に自由に配置することが出来て、ここに作戦があるのだ。互いの駒は見えず、順番に動かしてぶつけながら、相手がなんの駒なのかを読み取りながらゲームを進め、最終的に軍旗にまで攻め入った方が勝ちという将棋だ。最初にどう並べるかにかかっていて、さらにぶつけていく過程に偶然的な要素がたくさん入るから、ゲーム性の高い玩具として弟とも一緒に遊べたのだ。

難点はぶつけた駒をどちらが勝ちかをジャッジする審判がいなくてはならないことだ。買ってきたばかりの頃は親父がその役を買って出たが、親父の本来の目的は戦争についての教育だったからそれが済めば目的達成で、後の子供たちはうざったいだけだった。活路を友人に求めて3人で集まってはコイツで遊んだ。だがコレ実はずるくて、安っぽい駒は慣れてくると駒の色の濃さや木目でどの駒かわかってしまう。すべてではないが、いつくかわかるのはかなり優位になり、つまり駒の所有者が強い。というのもあってか、あまり大ブームにはならなかった。

ともかくコレは、なにかにつけ戦争とはなんぞやと語りかけた親父にとっては秀逸なツールだったのだ。小学生にわかりやすく戦争を解いた、一緒に組み立てた戦艦大和のプラモデルと同じような存在なのだ。そんな親父からもっと当時の話を聞いておけばよかったと後悔することは多い。

今年もまた、あの夏の日が近づいてきた。テレビでは生きていたら親父くらい、それ以上の方々が貴重な体験を語っている。キチンと受け取りたいものだ。

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2件のコメント

  1. 「ルール教えるから今度やろうぜ~」とよく言っていた友達がいましたが、結局その機会は訪れる事なく、ついに軍人将棋は未経験のままとなりました(^^;;

    戦争の話を出来る方が少なくなりましたね。
    我々は体験した世代から直接多くの話を聞けました。
    若い人たちが、又聞き世代だから戦争への意識が希薄になった、なんて事を言われないように我々は祖父たちの思いをしっかり伝えていかねばならないですね。

    • ありがとうございます。そうなんです。僕ら戦争を知らない子供たちですが、経験を聞いている大事なブリッジ役ですよね。今日の広島での式典で、2人の子供から届けられた見事な言葉を胸に刻み、責務をまっとうしましょう。

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