今日は朝から雨で、残念ながら織姫と彦星は逢えない七夕になりそうだ。このすてきなストーリーにあやかって、七夕イベントを仕掛けようとしていた広告屋の小僧時代が懐かしく感じる。僕が入社したのはバブル崩壊後だったが、まだまだ世の中は浮かれ気分で、消費は旺盛だった。七夕イベントの仕事は4月頃に突然降ってきた。クライアントの百貨店のイメージアップを目的に、カップルを対象にしたコンサートを仕掛けるとのことだった。そんなタイミングで7月7日にスケジュールがつまっていないミュージシャンなんてろくなヤツがいない。結局ボツってしまったが、あーでもないこーでもないとミュージシャンをビックアッブして、こういった部分が七夕らしいのだと上司にプレゼンするのは楽しい仕事だったから、強く記憶しているのだ。上司やクライアントが、七夕はいずれクリスマスやバレンタインに次ぐカップルディになると、本気で取り組んでいたのも印象的だった。実際にこの頃は赤プリの予約が困難になっていたようで、本気になるのもわかる空気感があった。今となっては、七夕どころかクリスマスにも当時のようなバカバカしい盛り上がりはない。やはりバブルだったのですな。
自分のバンドが七夕イベントに出演なんてのもあった。オリジナルを演奏するのは許してもらえたものの、カバー曲も入れろとの条件付きだ。普段のライブより少しおとなしいセットにして、会場となっている百貨店の老若男女のために歌うのは若干の恥じらいと抵抗があった。だが、自分たちでチケットをさばくわけじゃなく、ギャラをもらえるのだから当然だと受け入れ、新しいお客さんを獲得するチャンスだと気合いを入れてのぞんだ。
ロックバカどもが探してきて入れたカバー曲が、ひとつはディズニーの『星に願いを』だ。キャー、恥ずかしい。この僕があの曲をステージで歌ったのって、今考えるとミスマッチ以外のなにものでもない。プログラムされていたのは2回のステージで、どちらもオープニングにこの曲を持ってきたのだ。オープンスペースでのフリーライブだから、曲寄せをこの曲に託した。だが当然ながらあまりうまく歌えず、僕はこの曲を聞くたびに苦々しい気持ちになる。
もう1曲セレクトしたのが沢田研二さんの『あなたに今夜はワインをふりかけ』だ。苦労して探しあてた七夕ナンバーで、おしゃれなワインが七夕を彩るとの判断で、かつ、せっかくカバーを入れるなら誰でも知っている曲がいいとこれにした。シングルではB面収録ながら、本人出演のワインのCMで流れていたから知名度は抜群だった。客寄せにおおいに役立ち、僕自身もこの曲はうまく消化できて今もカラオケの定番にナンバーにしている。
阿久悠さんの歌詞がやはりすてきだ。当時は今ほど女性がお酒を飲まない時代の感じがよく出ている。肉食女子とか言われている昨今では、この歌詞はまったく通用しない世界観ですな。
さてさて、七夕の夜をロマンチックに過ごす相手のいない方々は、読者ミーティングの『浅草秘密基地』にお越しくださいな。めいっぱいロマンチックに過ごしましょう!!