自宅近くのディープタウン・蒲田をフラフラと歩いているとバッティングセンターを見つけた。「よーし、いっちょやったろう」と入ってみると、カップルや家族連れ、ストイックに1人で打ち込む方などなど、老若男女で大盛況だった。10以上あるブースはどれも待ち客が出ているが、回転はいいようなので僕も待つことにした。最高スピードは140㎞/hで5段階あり、僕はひとまず100㎞/hのブースに入った。
小学生の頃、近所にバッティングセンターがオープンしたときの興奮は今も忘れられない。最高120㎞/h出る。そんな球を同級生で投げられるヤツはいないうえ、ほぼすべてストライクゾーンに投げ込んでくれる。これはいい練習になるとクラスメイトと勇んで出かけた。ほとんど当たらなかったものの、ごく稀に前に飛ぶとそれは震えるほどの快感を味わったのだった。
あの頃、100㎞/hの球は楽勝ではじき返していた記憶からプレイを始めたが、これがまったく当たらず、ごくたまに当たっても前に飛ばない。球とバットに馴染んだらスピードを上げていこうと考えていたが、敗北感で最初の20球を終えた。「よーしもう1回」と2ゲーム目も同じブースに入ったがダメ。「最後にもう1回」と、結局60球を投げてもらってまともに前に飛んだのはホンの数球で、空振りが軽〜く半分は超えただろう。小学生のころの僕より下手になっていることを知り、まさかここまで衰えていたとは…と驚愕した。高校生の頃の自分に勝てないのなら仕方ないと諦められるが、小学生とはなんと情けないことよ。
最近剣道を習いたいと思い始めていたところだった。小中学生時代に警察で習い、その精神を叩き込まれたのは今も感謝していて、まだ体がしっかりと動くうちに再開しようと考えていた。休みが取れない職種だから現実的にかなり難しいのだが、そのうえこの体たらくとなるとますます道場が遠のいてしまう。100㎞/h程度の球に目がついていかないのだから、激しくくり出される竹刀になんかまったくついていけないだろう。道場に迷惑がかかってしまうだろうと思うと、やはり情けないばかりだ。
ひとまず素振りから始めようと思っている。道場に通っていた頃の練習用の木刀がいまだにあるから、朝のホンの10分でも積み上げれば効果はあるだろう。そして同じく、当時の木製バットも大切に持っている僕だ。竹刀より先にバットの素振りを初めて、バッティングセンターでリベンジを果たすのもいいかもしれない。100㎞/hをコンスタントに打てるようになって120㎞/hにチャレンジしたい。落ち込んではいるものの、まだ取り戻せる気がする。このバッティングセンターの120㎞/hマシンは、広島カープの前田投手が投げてくれる映像つきで、モチベーションをグーンと上げてくれる(笑)。
50歳を目前に、いろんなことが瀬戸際にあるような気がする。放っておけば衰えのスピードが増すばかりの俺たちだから、逆に考えれば今が努力のチャンスなのかもしれない。取り戻していける快感はきっと味わうことができるからだ…、と、今はそう信じている。たまたま遊びで入ったバッティングセンターが気付かせてくれた教訓としよう。