昨日お伝えしたバルタン星人の登場による新連載に加え、最新号ではもう1発スタートを切っている。昭和40年男にとって、洋楽が自然と耳に入ってくるようになったのは80年代に入ったあたりのはずだ。あの頃俺たちを熱くさせた洋楽を、タメ年の音楽ライターの木村ユタカが追想する連載企画は、名付けて『洋楽追想記』だ。
60年代の後半~70年代の前半に、ロックの先駆者たちが次々に新しいスタイルを作り上げた。70年代の中頃になると、その影響下で高いクオリティを誇る音楽や、さまざまなスタイルをクロスオーバーさせた新しい響きの模索が始まった。それに加えて、アメリカを中心とした音楽市場の肥大化によって、レーベルを挙げて新しい個性の創出に躍起になり、大きなレーベルはメンツを賭けてヒットチャートをかき回すことに力点を移していった。結果として、秀逸なポップサウンドが次々に生まれ、そこにカウンターを打つ者たちも次々に出てきて、シーンはどんどん魅力的でありながら、混沌としていった。と、こうして洋楽シーンが1つの沸点を迎えた時代が、70年代後半~80年代の初頭だろう。この喧噪の時期が、僕らにとっては洋楽に興味を持つ時期とシンクロしたのは幸せだと常々思っている。そんな賑々しかった音楽シーンを追想する1ページ企画が『洋楽追想記』で、そのトップバッターとしてセレクトされたのがJ.ガイルズ・バンドだ。
『堕ちた天使(Centerfold)』を記憶しているタメ年男たちはきっと多いことだろう。軽快なリズムにメロディも親しみやすく、当時の流行もキッチリと抑えている。高校生の僕らにとっては共感しやすい(!?)歌詞もよかった。「ある日、かつての同級生で憧れのエンジェルが、男性誌のグラビアにあらわな姿をさらしているのを見つけてしまう。ガラガラと想い出が崩れ去っていく。でもだったらモーテルで一緒に裸になろう」というすばらしいオチだ。歌詞の内容をしっかりと表現しながら、セクシーなシーンを含むミュージックビデオがすばらしかった。なんとも楽しそうな雰囲気だったし。
ヒットの前にもバンド名は知っていて、骨太のロックンロールを聴かせるとの評判に興味は持っていたが、ある日届けられたヒットチューンはあまりにも想像とかけ離れていた。とはいえ『堕ちた天使(Centerfold)』を収録したアルバム『フリーズ・フレーム』はお気に入りのアルバムになり、当時聴きまくったものだ。そして中古レコード屋で2枚組のライブアルバム『狼からの一撃』に安値がついているのを見つけて、即購入するとしびれた。なんちゅうカッチョいいバンドじゃ。『フリーズ・フレーム』は仮の姿じゃと狂喜乱舞したのだった。
残念ながら成功の裏に挫折ありで、看板ボーカリストのピーター・ウルフが脱退し、その後バンドは活動を休止してしまった。その後は、大好きなピーター・ウルフの歌を追いかけて、ソロアルバムも何枚かつき合ったが、このライブアルバムほどの輝きは見つけられなかった僕だ。なんて想い出が詰まったJ.ガイルズバンドで始まった連載を、どうぞよろしく!!