昨日もバカバカしく盛り上がった読者の集い『浅草秘密基地』に、1人の常連タメ年男が東北名物『くるみゆべし』持参でその輪に入って来た。3連休に旅行とはうらやましいなと思ったら、これが男たちを唸らせるちょっといい話だったのだ。
48年を超える人生を歩んで来た俺たちだ。逢いたいけれど音信不通になってしまった友の1人や2人、いや、それ以上かもしれないがいることだろう。デジタルコミュニケーションがここまで発展していても、肝心の使う側のみんながみんな発達はしていないから、技術を駆使したところで不通となった誰とでも繋がれるわけじゃない。僕も何人もの再会したいヤツの顔が目に浮かぶが、デジタル難民ゆえに繋がらない(泣)。土産持参の彼がデジタル難民というわけではないが、この連休に音信不通になった者との再会へ実にアナログ(!?)な行動を起こしたのだった。
20年以上前に同じ職場で知り合い意気投合して、毎日のようにつるんでいた友がいたそうだ。ある日消息を絶ってしまったのは、あまりよろしくない事情からだが、2人の間にはなんのわだかまりもなく、思い出しては逢いたいとの日々が続いていた。東北のとある温泉地に実家があることを知っていたから、一念発起してこの週末に旅立ったそうだ。旅館を予約して、見つからなくても手がかりくらい得られればいい。温泉に一泊という自分へのご褒美だけでも、休日を充実させるのには悪くない。まだ雪深い温泉地に着き、旅館に友の名を告げるとあっけなくその家が見つかった。歩いて数分のところに行くと、家の鍵は開いていてテレビの音が漏れていた。ノックを繰り返すが誰も出てこなく、隣の商店にたずねるとクルマが置いてあるからきっといるはずだと。いつも鍵なんか閉めないし、あがったらいいとアドバイスを受け不法侵入した。1階には見当たらず、2階へと階段を登りふすまを開けるとそこには…、20年以上の月日を経た友がテレビ鑑賞中だったそうだ。再会の大きな感動はまるで目に浮かぶようだ。相手の驚きは瞬間的にどれほどのものだっただろうか。そう思うと笑いもこみ上げて来る。長い時間を埋めるかのように酒を酌み交わし、翌日は友の家に泊めてもらい、結果的に二泊三日の温泉旅行となった。音信不通状態からの完全脱却となったと、そんな話だ。
行動したから、その分より大きな感動が生まれた。その温泉地に友がいる確証はまったくなく、調べてから出かけることもできただろう。だが、20年以上の月日を埋めるのにそんな野暮なことはしない。動いてこその再会だとの清々しさがあるじゃないか。今どきなんてバカなと笑うなら笑え。僕はこんなバカバカしい行動が大好きで、あっぱれだと称賛する。その素晴らしい行動の証となった『くるみゆべし』のやさしい甘味が、参加者たちの口に運ばれた夜だった。