大編集後記 その拾壱: 憧れのローリングスとミズノ、現実のSSKとZETT。

グローブ今回の野球特集の冒頭ページに大きく、その後に続くページの随所にもこの古びたミズノのグローブの写真を使った。これを採用したのは、きっと多くの昭和40年男たちが憧れただろうと考えてのことだ。ローリングスはリトルリーグに入団できた硬式の連中が使っていたというイメージで、憧れたものの遠すぎた。逆に大衆ブランドといえばSSKとZETTだろう。僕は親父のお古でブランドがわからないものからスタートして、やがてスポルディングのものを買ってもらったが、コイツは小学生の高学年になると少々肩身が狭くなった。ねだりにねだって手に入れたのがSSKで、やっと堂々とグランドに立てるようになった。

SSK

僕は当時剣道も習っていて、道具を大切にする心を教え込まれていた。さらにある日読んだマンガに、王さんは自分の心をバットに込めるため、ビール瓶で丁寧にしごく姿が描かれていたことにも強く影響を受け、道具には魂が宿っていると思うようになった。後に手に入れるギターやバイクにも通じ、恥ずかしながら今も道具に特別な感情を持ち続けているのは、小学生のときのままだ。

このグローブやバット、稽古で使っていた木刀など、すっかりくたびれてしまったが今も手元にある。数回の引越し時も捨て去ることなく、とくにバットなんかはまず使うことがないのに大切に保管しているのは、あの日に込めた気持ちの大きさゆえだ。

グロープちなみに、誌面に採用したミズノのグローブは、友人から借りたものだ。こうしてローリングスも用意したのだが、残念ながら誌面で使うことがなかった。両方とも当時ものだから「ああ、コレを使っていた」という、幸せな昭和40年男は少なからずいるはずだ。そしてきっと、汗にまみれた日が蘇ることだろう。

小学生の頃のクラスでグローブを持っていない男子はいなかった。それほど浸透した遊び道具は他には存在しないだろう。だが、僕らの世代以降はグローブの所有率が少しずつ落ち始め、息子のクラスではサッカーボールの人気が高かった。それでも全員が持っているわけじゃなく、もっとも浸透していた遊び道具はゲーム端末で、僕らの時代のグローブに取って代わったように、クラスの男子全員が持っていたそうだ。やはり時代は大きく変わったのだな。

『俺たち野球で大きくなった』と冠して、1冊リリースできる時代を生きたことを誇りに思う。

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2件のコメント

  1. 少し40年男とはズレがありますが、楽しく読ませていただいてます。
    今回は野球。まさにツボ。
    ド下手のくせに高校までどっぷり野球にはまりました。
    高校の野球部にいたころのグローブは「ミズノのワールドウィン」
    ここにある「ミズノ」のグローブによく似ています。
    赤いカップのマークが硬式用で、そのマークがクロスウェブについている外野手用の大きなサイズのグローブです。
    もちろんまだ大切に持っていますよ。
    私にとって野球は人生に大きな影響があり、特別な意味を持っています。
    一応今となって考えると「甲子園」に近いところにあった高校で、あの仲間と過ごせたことがその後の人生に大きくプラスになりました。
    今はオッサンになり時代の荒波に翻弄されていますが、野球のおかげでなんとか生かしてもらっています。

    しかしあのころは確かにみんなグローブって持ってましたね。
    高校の球技大会でソフトボールなんかあると野球部やソフトボール部はもちろんグローブを持ってるんですが、ほかの部や帰宅部のやつでも家からグローブを持ってくるやつがいましたもんね。
    キャッチボールしたことのないやつって、今よりずっと少なかったでしょう。

    そんな私にとってツボの今回の「昭和40年男」
    次号はどんな私にとってのツボのテーマか楽しみです。

    • ありがとうございます。高校まで続けたとは素晴らしい経験ですね。僕は中学で退部してしまったハンパ者ですが、それでも野球から学んだことはたくさんあります。お互いに球児精神を大切にしながら、難しい世の中で奮闘していきましょう。

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