最近の『昭和40年男』には少ないながら広告が入っている(パチパチ)。他の雑誌に比べると圧倒的に少ないが、ゼロの時もあったくらいなのに今回は5本も(人は「5本しか」とも言う)入っているのだ。表紙をめくると、シティポップの爽やかさとは真逆の存在、僕にとっては3度の飯より好きな、ブルース・スプリングスティーン様の新譜広告が入っているじゃないか。ちなみに、広告用語ではこのスペースを表2という。表紙から数えていって、裏表紙が表4でそいつをめくったところが表3と呼ばれるのだ。表3にはジャッキー・チェンの『酔拳』で表4はブラピの『ワールド・ウォー Z』と、なんと全部外人ネタだ。さすが国際感覚あふれる僕が手がける雑誌だな(笑)。
読者のみなさんから、よくこんなに広告がなくてやってられるなと言われるが、本音としてはもろちん欲しいですよ。でも、そのノウハウがない。コネもない。今回の広告を入れてくれのは、『昭和40年男』の創刊で知り合った方で、よき理解者だからこうして『昭和40年男』のキャラとマッチングのいい広告を入れてくれているわけで、今はその理解者が増えるのを待っている段階だ。広告が雑誌に与えるプラスの影響は実に大きく、たとえば誌面のリズム作りに一役買ってくれたりする。長い特集が終わった後のピリオドになってくれたり、今回の表2のようにまったく違ったテイストで変化をつけてくれたりもするのだ。
さて、昭和40年男にとってスプリングスティーンは『ボーン・イン・ザUSA』のイメージが強烈すぎるけど、彼の魅力はそのロック魂が炸裂するパワーもさることながら、夜の都会を丁寧に描く歌詞の世界も大きい。パワフルなロックに乗っかっているから、シティポップとはまったく異なる音楽にとらえられるかもしれないが、夜の都会でうごめく男の女の物語はシティポップの世界と通ずるものがある。
最高傑作のひとつで、昭和50年発売の『ボーン・トゥ・ラン』はきっと多くの国内ミュージシャンに影響を与えたはずだ。もちろんこの作品だけでなく、すばらしい世界観を持つスプリングスティーンの音楽や詞の世界は、80年代になると見事に邦楽にとけ込んでいる。たとえば佐野元春さんの存在がシティポップの世界で少し違和感があるのは、ロック色が強くてスプリングスティーン的なアプローチだからだ。昨日の話とも通じるが、当時の洋楽は百花繚乱の時代に入っていて、それらの手法がガンガン輸入された格好だ。遅れて花咲いた邦楽なのだが、キチンとキャッチアップして僕らを楽しませてくれたのである。
特集とは真逆にいるようで実は密接な男の広告がスゴく目立つ場所に入ったのは、偶然で片付けたくない気がするほどうれしく、雑誌にとっておもしろいストーリーになったとまで感じている。