この脈略のない作品にある共通点とは? 去年のこの時期は12月に聴きたいアルバム10選なんて書いていたが、この3作品は僕にとっては同じく、12月にもう一度観たくなる映画たちなのだ。おーっ、なんちゅう無節操なセレクトなんじゃ。
『THE 有頂天ホテル』は、ご存知三谷幸喜さんの映画で、大晦日から年明けを迎えるホテルのドタバタを描いた痛快な作品だ。実は僕、三谷映画を初めて映画館で見たのがこれだった。正月ぼけさえすでに抜けきったあたりで封切られて、内容をあまり下調べせずに出かけて正直、なんでこれを暮れに封切らなかったんじゃと怒りさえ感じた。好みの作品であることの裏返しでもあるのだが、コイツを見て笑って暮れを過ごしたらどんなにステキだったろうと、思えば思うほど腹を立てたのである。以後、暮れになると何度かビデオを回している。ちなみに去年も仕事納めが済んだ30日の夜にじっくりと楽しんだ。三谷さんはきっとお正月が大好きなんだと想像させるところが随所に見られ、待ち遠しくしている自分と勝手にシンパシーを味わえるのがいい。今年も30日に無事仕事納めができたら、一杯呑りながら観たいものだ。大晦日は『年忘れ日本の歌』と『紅白歌合戦』で忙しいし、仕事が残っている段階では観たくならない。年が明けてしまったら同じく意味がなく、毎年30日が仕事納めの僕にとっては、この日をおいて他にふれられる日がないのだ。そこまでこだわりたくなるところも、三谷さんファンゆえのことであり、この作品が好きだからだ。観るたび毎度泣く(笑)。
『ブルース・ブラザース』は季節関係無しに楽しめる作品で、そもそも夏が舞台だ。なんで暮れなんだと突っ込みたくなるが、ラストシーンの『監獄ロック』を歌っている騒ぎになんとも暮れの喧噪を感じてならない。理屈抜きに楽しめるという意味でも、『THE 有頂天ホテル』と同類なところがあるからかもしれない。この作品が好きなタメ年諸氏は、ぜひ暮れの押し詰まった日に試していただきたい。きっと、おーっ、そういうことかと納得するはずだ(!?)。
そして『男はつらいよ』は問答無用ですな。僕は講談社が仕掛けたシリーズにまんまとハマり、全作品のDVDを手に入れていていつでも観られるうえ、詳しい解説書も全巻セットされているのだ。いやあ、満足の買い物だったと今も感謝しているほどである。『男はつらいよ』は夏作品と冬作品があり、冬作品のほとんどが晩秋を起点にして暮れのドタバタ期に寅さんがふられる。そして旅先の神社で、初詣の客相手に寅さんの見事な口上が披露されて終わるというパターンだ。このラストシーンが正月好きにはたまらないのだ。
いよいよ今年も残り僅かになってきたなという2週間前ほどに、倒しても倒しても減らない仕事の息抜きにとビールを抜いて、自慢のDVDコレクションから1枚選んでプッシュプレイ。久しぶりの寅さんに見とれていたら、30分ほどして夏作品だと失敗に気付いた。
「しまった、だがもうここまで来たし、えーい、いっちまえ(ひとり言)」と、見続けて迎えたエンディングで大後悔した。山田洋次さん作品なのだから当然だが、『男はつらいよ』には季節がタップリと詰まっているのだ。その素晴らしさを逆に再確認させられたミスだった。
年男イヤーもあと残り10日となった。カウントダウンに入った締めくくりに、これらの笑いあふれる作品を楽しんだらいかがだろう。笑う門には福来るだぞ。
『ブルース・ブラザース』最高~!
なんせ、この映画の影響でくちびるの下のヒゲ伸ばすようになったからね。