「台割をもっと早くください」
前号の反省会で小笠原からのセリフである。
台割表に関しては以前ここで触れた(2009年10月17・18日)とおり、
雑誌づくりの設計図のようなものであり、ラフでもいいから
これを早いところあげるのは非常に重要である。
だが、日常業務が尋常な量でないうえに、〆切前の2週間ほどは
それらを後回しにして本づくりにかける時間の割合を増やすことになる。
〆切が明けると後回しにした分のまるで利子が付いたかのごとく大挙押し寄せるから、
初期段階で遅れが生じてしまい全体が遅れることになる。
冒頭の副編のセリフに戻る。
「わかっとるわい。次は発売月中に1発目を出す」
と宣言してしまった。
6月11日が前号の発売日で、すなわち6月中ということだ。
容赦なくやってくる仕事の数々をこなしながらも、俺はこの約束をなんとか守ろうとした。
3冊やって来たおかげか、外部スタッフとの連携がよくなってきていて、提案をバシバシいただける。
参加したいと言っていただける方がチラホラ現れ、これがまたいい企画を持ってきてくれる。
企画主旨を説明すると、俺の領域をはるかに超えたアイデアを出してくれる。
そんな頼もしい参加者たちにガッチリと守られ始めた気がする。
もちろん甘えてばかりじゃない。
俺も副編小笠原も、自分たちで作っている本ながら徐々につかめてきた気がする。
初期段階での最高傑作へむけて、スタートダッシュはこの上なくいい感じで切れた。
山積した業務をリズムよくこなしながら、本づくりも常に前進していくいい流れがつかめて、
6月中の約束からは少し遅れたものの7月3日に1発目の台割表が完成し小笠原に見せた。
「おーっ」
驚嘆の声を上げた彼だ。
それもそのはず、これまで数々の本を一緒につくってきた彼は
俺の仕事ぶりをイヤというほど知っている。
このペースは未体験なのだ。
「いこうぜ、最高傑作だ」
俺たちは燃えている。
そして、取材が進み企画が固まっていくたびに台割表に改良を加えていき、
昨日深夜の8月25日にほぼ最終レベルの台割表を完成させた。
あとは最終的に仕上がった原稿や写真、デザインのリズムを見ながら
若干の入れ替えが生じるくらいだ。
自分でいうのもなんだが、この台割表は美しい仕上がりである。
(うわーっ、超自画自賛だーっと赤面しつつ続ける)
これまでも、美しいと感じるほど納得のいった台割は何度か体験しているが
今回は間違いなくベストと呼べる。
45歳になって1発目の台割表がそうなったのは、
くどいようだが参加してくれた多くの人間たちのエネルギーが結晶となったからだ。
あとはこの設計図通りに誌面ができ上がれば、俺の本づくりの歴史上で最高傑作となるだろう。
その瞬間に手が届いたのだ。
とはいえ、もちろん勝負はここからだ。
この追い込みにどれだけのエネルギーを注ぎ込めるか?
どれほどのひらめきが出てきて、カタチにして押し込めるか?
時間は残酷に刻まれていき、俺の最高のオモチャを取り上げてしまう瞬間を連れてくる。
そのときをどんな気分で迎えるのか、さあ、本当に勝負だ。
3日間、いや24時間でいい。
今俺にプレゼントしてくれる人がいたらどんなにステキなんだろう。
などと情けないことを考えていないで、さっさと原稿を書きなさいってか。