処女作はそこそこのヒットになった。
だが、始めのガイドラインだけを伝えた後は編集にあまり口が出せず、
自分たちの本だという感覚は徐々に薄れていった。
あまりプロにぐちゃぐちゃ言うのもなあ、といった感覚である。
その欲求不満を解消しようとしたのが、翌年に立ち上げた『ジパングツーリング』である。
ある日、再び神が降りた。
ツーリングライダーから絶大な支持を受けている『ツーリングマップル』という、ライダー向けの地図がある。
改訂を重ね、今は少々大きくなってしまったが、
かつてはポケットに入るくらい小さいものだった。
俺はツーリングの度に、この地図に情報を書き込んでいた。
うまいそばや、いい温泉、おばちゃんがステキな民宿などなど、
自分の体験記のようなものにもなっていた。
その宝物を胸のポケットに入れ、高速道路を走行中に悲劇は起きたのだ。
するっとポケットから出てしまい、さようならになってしまったのだ。
これまでせっかく集めた各種情報がなくなってしまった。
しばらく後悔しながら走っているうちに、タンデムシートに座った神がささやいたのだ。
「じゃあ、作っちゃえよ」
そうだ、編集部が実際に走ってかき集めた情報を満載にした雑誌をつくればいいんだ。
当然、携帯しやすくなければならないから、小さい方がいいとバイク雑誌初のA5版にした。
旅に持っていってグチャグチャになるから、保存用と2冊買ってもお財布に優しいように定価は280円にしよう。
こいつはスゲエやと、心がスキップ状態で出版社に出かけた。
ところがすぐにGOが出た前回とは打って変わって、版元は難色を示したのだった。
まず値段が280円ということはそれだけ数多く印刷して、
返本の少ないことが条件になる。リスクが大きいということだ。
それと小さいわりにそれほど印刷費が下がらない。
コストパフォーマンスが悪いのだ。
幾度もの交渉の末、情熱だけでなんとかクリアした。
先の『カワサキバイクマガジン』が評判だったことも幸いした。
うーん、まだまだ続くよーん