今日はお彼岸の中日ですな。近所の土手を歩いていたら、アチコチに彼岸花を見つけた。季節はキチンと巡り、草花はその通りに花をつけ実り、そして枯れていくのですな。
毒々しくもあり、美しくもあり、なんとも不思議な姿である。事実、毒を持っているそうで、幼少の頃、田んぼの畦道でよく見かけたのは、実った米を小動物から守るためだとか。毒を持っている花ってのは、なんとなくそう感じられるものなんだな。また大きな特徴として、一般的な多くの草花と生育の順序が異なっている。秋になるとニョキニョキと茎だけが伸びていき、葉もつけないままある程度の高さに伸びると、突如この妖艶な花をつけるのだ。その後一旦枯れてしまうと今度は葉をだす。冬の寒さを堪え抜いて、春が過ぎるまで球根に栄養を溜め込んで夏には枯れてしまう。そして秋になるとまた茎をニョキニョキと伸ばして彼岸に咲くのを繰り返す、なんとも不思議な生育である。
別名が曼珠沙華。昭和40年男たちにはピンと来るだろう。山口百恵さんの名曲であり、『いい日旅立ち』を収録したアルバムタイトルにもなっていた。20歳になった百恵さんが「あなたの前で女でありたい。あたしはもう20歳」と結ぶセリフから続けてイントロが流れ、静かに歌に入っていく。激しく変化を見せる曲で、百恵さんはそこに乗っかって見事に歌いきる。この曲を百恵さんのベストソングに挙げるファンは多い。ちなみに獅子座の僕は断然『乙女座宮』だが(笑)。いやいや、この曲は百恵さんの最高傑作の1つであり、宇崎竜童さん作曲の中でも、名曲の1つに挙げるべき曲だろう。もちろん、阿木さんによる詞も素晴らしい。アルバム発表の翌年のシングル『美・サイレント』のB面曲としても収録されていて、A面でのシングルとはなっていない。テレビからのその凄まじい歌唱を強く記憶しているから、てっきり大ヒット曲だと思っていた僕だ。
昭和40年男たちは、この情念のこもった名曲を中学生のときに受け止めた。きっと微妙な年頃の心をぐしゃぐしゃとかき回されたことだろう。彼岸花の妖婉さのごとく見事な百恵さんだった。やはり昭和を代表する歌姫なのだなと、今あらためて唸るばかりだ。