大編集後記その六。昭和57年、マイケル・ジャクソンの衝撃。

昨日発売になり、どんな動きになっているかが気になって仕方ない。がんばるんだぞ、黄色い表紙の最新号!!  ではしつこいようだが、最新号 (vol.21) の解説となる大編集後記をお送りさせていただく。

マイケル・ジャクソン

連載特集『夢、あふれていた俺たちの時代。』は、今回昭和57年でお届けする。前号よりリニューアルして、特集の冒頭に1ページのトビラをつけることにした。ここに何を持ってくるのか、そしてどんな写真が手に入るのかとスリリングな作業ながら、昭和40年男のとしては実に楽しい。前号で特集した昭和50年のときは、広島カープが優勝した年ということで、名将古葉監督だろうと決定した。昭和40年男は多くが野球少年で、その記憶に赤ヘル旋風はあまりにも強く残っている原風景だからだと、すんなり決めることができた。

当時の年齢でのフィット感がビジュアルから伝わることを目指していて、俺たちの記憶をバッチリとくすぐるもので作りたい。たとえば、もしも赤ヘル旋風が昭和57年だったらここに持ってこないだろう。17歳の俺たちにとって、野球への興味は少し薄くなっていたからだ。そんな理屈はさておき、今回の昭和57年ということでピンと来たのは、問答無用でマイケル・ジャクソンの『スリラー』だった。

洋楽には比較的早くから夢中になっていた僕にとって、この頃は次第に流行の音楽から心が離れていった時期だった。だから『スリラー』も、アルバムを通して聴いたのはずいぶん後になってからで、夢中になって追いかけたわけじゃない。だが、マイケルの衝撃は威力抜群で、アルバムこそ聴いていなかったが、次々と届けられるシングルが驚嘆するものばかりだった。そのサウンドのクオリティは、流行の音楽云々とか言ってるクソガキを黙らせるのに十分だった。「ビリー・ジーン」のカッチョよさったら、ウッとかアッとか挟む歌唱とともに新鮮に響き渡った。そして何より「今夜はビート・イット」(この邦題がいいね) のフィルムでのダンスと、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターソロに度肝を抜かれた。「ウギャー、ポップスでハードロックのギターリストが本気で弾いてるよ」と。プレイが素晴らしいのに加えて、ポップスナンバーらしくソロが短くまとめられていることも、センスとかそんな言葉だけじゃ片付けられない、恐ろしさすら感じた当時の僕だった。

多くの昭和40年男が同じように迎え入れたのではないだろうか。そして、説明不要のシングル「スリラー」のフィルムは、ミュージックビデオ全盛時代の最高傑作であり、やはり俺たちの記憶の原風景だ。しかも、昭和40年男たちがハイティーンだったということは、ちょうど興味が歌謡曲から洋楽やロックにシフトしていった時期だろうからフィット感も抜群だろう。それとは別に、ハイティーンらしい甘酸っぱい想い出と曲が結びつくタメ年も多いのではないだろうか。音楽って当時の空気までをも届けてくれるからね。と、今回はマイケルにご登場いただき完成した。

音楽シーンどころか世の中を大きく揺り動かした現象を、ハイティーンで感じられた昭和40年男はなんと幸せなんだろう。そんな感謝の気持ちを込めて作ったトビラページで、連載特集が始まるのじゃ。
 

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