先日、ビルボード東京に出かけてきた。その話だったらちょっと前にここで読んだぞとおっしゃりたいところでしょうが、この前観たのはザ・バンドのキーボーディストガース・ハドソンであり、それからわずか中3日を挟んで、リッキー・リー・ジョーンズの公演が同会場で行なわれたのだ。そして今日は『うわの空・藤志郎一座』の舞台と、なんとも幸せな日々を続けていることになる。
普段から、ビルボード東京とブルーノート東京の情報はチェックしていて、「これだっ」とのミュージシャンを狙い撃ちしている。庶民にとってチケットが高めだから吟味は厳しい基準になる。大揺れすることはしばしばあるものの断念することの方が多く、ビルボードはオープンして6年を迎えてまだ2回しか訪れたことがなかった。今回のようにドンピシャで行かねばならぬライブが、8月初旬に固まったのは奇跡に近い。ちょっと贅沢な連チャンビルボードの幸せをかみしめながら、大いに楽しんだのだった。
リッキーは僕にとって3大女性ボーカリストの1人で、後の2人はジャニス・ジョプリンと越路吹雪の両名だからライブを観られるのはリッキーのみということになる。もう少し早く越路ワールドの素晴らしさに気付いていれば、もしかしたら1度くらいは観られたかもしれないとの無念を持ち続けている。余談ながら、僕にとってあまりにも大きな存在のブルースマン、ライトニン・ホプキンスも78年に来日していたことを後に知って、自分がブルースに目覚めた遅さをいまだに悔やんでいる。とはいえ、中1であんなものを観たら今頃廃人だろう…。
リッキーのライブを観に行くのは2度目で、チョクチョク来てくれているのに意外と少ないのは、いつも日程が合わず涙をのんでいた。今回はバッチリで、何年ぶりになるだろうか。当時はまだこんなブログをやっていないから、記憶には残っていても記録にないのが残念である。そしてよくよく考えれば、これまで行ったライブのレポートを残していれば、自分にとってどれほど価値があることだろう。ずいぶんたくさんの素晴らしいライブにふれてきたが、やはり記憶は曖昧になりつつあるものが多い。稀にネットで、出かけたライブのセットリストや回顧録を見つけると狂喜乱舞する僕だ。
リッキーといえば、デビューアルバムに収められた邦題『恋するチャック』のヒットで知る昭和40年男が多いだろう。ヒットしたのは中2の夏から秋だった。『ダイヤトーン・ポップス・ベストテン』でシリア・ポールさんが絶賛した新人だった。耳にしっかりと残ったものの、当時はとくにハマったわけじゃなかったのだが、後にミュージシャン仲間からの強烈プッシュで聴き直した。たしか20歳前後のことだった。自分がバンドで歌っていたからということもリッキーにハマった大きな要因で「なんちゅう歌がうまくて個性的なんじゃ」と聴きまくった。素晴らしいシンガーと出会ったと、歌っている仲間に紹介すると、ほとんどのヤツがリッキーをリスペクトしていて、むしろ僕は遅れていたのだった(恥)。
今回のライブも前回同様素晴らしかった。まったく衰えていない声と表現力。カッチョよく女性っぽくないゴリゴリしたギターと、途中からはピアノに移ってちがった世界を作り上げる。リッキーワールドに会場中の誰もが酔いしれた。ちょっと前にガース・ハドソンを観たときに、ザ・バンドの名曲『ウエイト』を演奏してくれた。リッキーの最新アルバムには同曲がカバーで収められているから、ここで演奏することを大いに期待した。ガースとリッキーのバージョンをライブで、しかも僕自身もカバーしていまだに好んで歌っている曲を、中3日でライブで聴けるかもしれない。そんな壮大な夢を描いたのだが、さすがにかなわなかった。まあ、これだけの奇跡にそこまで望んでは罰が当たるってものだな。
僕ら昭和40年男にとってなじみ深い『恋するチャック』は、当時と変わらぬ声量とクオリティで披露し、同世代が多い会場からは大きな歓声が送られたのだった。全編テンション感の高い演奏を楽しめて、大満足の夜となった。それにしてもずいぶんと大きな出費になってしまった。しばらくおとなしく過ごすことにしよう。
女優の名取裕子さんが「音楽の旅遥か」でリッキー・リー・ジョーンズが好きといっていた。30年近く前だろう?
そういえば最近、リッキー・リーという若手ミュージシャンがいるようだ!(ジョーンズがつかない)
クリス・ペプラーがTOKIO HOT 100(ラジオ番組)でいっていた。