ちょっと以前の話になるが、〆切を終えて百貨店のバーゲンに出かけてきた。いつも思い出すのは、20歳前後の頃の戦場と化した丸井のバーゲンだ。透明の袋に次々にお買い得になったDCモノを突っ込む。僕はファッションにはかなり疎かったけれど、その騒ぎの大きさとなんてったって半額につられて出かけたことは幾度となくある。最強兵器「赤いカード」を、しっかりと指差し確認して出かけたものだ。今も家からわりと近くに丸井があり、その周囲には百貨店とショッピングモールがあり、夏と冬のバーゲンには必ず出かける。今じゃガラガラで、透明の袋を持っているヤツなんかほとんど見かけなくなってしまったのは、あの時代を知っている僕にはちょいと寂しい。
今回は珍しくターゲットがある買い物だった。いつもはなんとなく眺めながら「うっ、これ70%オフなら買う」と、そんなショッピングなのだが、今回は仕事用のパンツのケツがすり切れてしまったのでゲットしたい。併せて、靴がほぼ全滅になっていたのを我慢して履いていたのはバーゲン待ちで (セコイ)、2足は購入したい。こういう目的意識があると俄然買い物は楽しい。さらに加えて、元々シャツ好きの僕がここ近年はやらしい柄物や派手な色のものに手を出すようになっていて、その傾向は強まっている。これによってまたバーゲンでの楽しさが増しているのだ。ちょっと手が出ないお値段が、ガツンと半額とかになっているとチャレンジしやすくなり、ついついそれまで着たことのないようなシャツを手に入れるのがまた楽しい。ちょっとやらしすぎるかなというのを「えいやーっ」と着てしまえばあら不思議、気に入ってしまうじゃないの。
『昭和40年男』の仕事の影響も大きい。タメ年のインタビューに行くと、ファッションに気を使っている方が実に多い。単純にカッチョイイ男が多いのだ。頭は薄くなってしまっても、腹がちょっと出ていても、ファッションにこだわることでだいぶ隠すことができる。それどころか、その年齢のわりにはとの注釈が付いてしまうが、おしゃれな人との評価が得られやすくなっているのは、50歳を目前にして頑張っている男たちが少ないからだろう。
『昭和40年男』前号 (vol.19) で、毒蝮三太夫さんが「誰だって歳とりゃ、小汚くなるよ。だからまずは外見に気を使うのが大事」「歳をとると、自分がどう見られるかってことに無頓着になる」と語っていて、フムフムと頷いたものだ。実際に毒蝮さんのその日のスタイルはおしゃれだったし、清潔感にあふれて77歳には到底思えない。
「浅草秘密基地」の舞台となっているショットバー「FIGARO」のマスターもステキだ。もう還暦を過ぎたってのに、体型は出会った頃の30代後半とほぼ変わらず、相変わらずやらしいシャツを着こなしている。頭の変化は著しく、昔はあった髪の毛は面倒くさいとスキンヘッドにしてしまったが、還暦超えに見えないのはこうしたものを着ているからだ。いや、正確には着ようとする気持ちを毎日持っているからで、これを毎日積み重ねていくことで、いつの間にか大きな差になっていくのだろう。ここ近年は、互いにバーゲンで仕入れたやらしいシャツを自慢しあうのが恒例となっている。これを続けることで僕も彼のような還暦を目指したい。と、写真のようなセレクトをしてみた。〆切から解放された気持ちも手伝ってか、また半額以下となっているプライスカードに誘われてか、この他にシャツを2枚とパンツと靴の計7点のショッピングになった。そして、いつもにましてド派手な選択になってしまったのだった。
ぼくもこんな柄シャツ好きです。靴はもっぱら浅草のユニバースです。