昨日は定点観測のつもりで、先日の東京都議会議員選挙と同じ時間帯に投票所に出向いた。さすがに前回よりは人がいたが相変わらずさみしい会場で、実際投票率は振るわない選挙に終わってしまった。今回も一本立ちした息子が投票のために帰って来たのは、唯一うれしいことだったかな。さてさて、高い期待を国民から得た自民党はどんな舵取りをすることやら。
たった6年前の夏のことだ。安倍首相と中川幹事長は、呆然としながら記者たちの質問に答えていた。ずいぶん長い月日を経て、同じ首相の隣には真っ黒に焦げて笑みを浮かべる石破幹事長の姿があった。あの敗北の日とは対照的に、リラックスして質問をさばいていた。ここまでの天国と地獄を味わった男はそうそういまい。歴史的敗北とか惨敗のコピーが踊り、参院第一党から結党以来初めて転落した。ここからの政治は民主の快進撃から迷走、そして今回の選挙に至るまでまるで仕掛けられたストーリーのような転落劇を演じ、昨日が1つの時代の幕引きとなった。いろんな要素が横たわっているが、とくに日本を根底から揺るがした東日本大震災はあまりにも大きく、今回の自民の圧勝にも繋がっている。原発推進を一直線に突き進ませてきた自民党が3月11日に政権与党からはなれていた偶然は、そのまま民主に大きくのしかかったことになり、なんとも皮肉な話である。
朝のニュースバラエティ番組で、安倍首相による土曜日の午後8時直前、つまり最後の演説が映し出されていた。焼き肉屋に行ってロース1皿だったのが、カルビを2人前にしてホルモンもつける。生ビールも何杯も飲む。すると肉屋も酒屋も八百屋も潤うみたいなことを叫んでいた。このセリフに頷く国民がどれだけいるのだろうと苦笑するしかないが、支持者の前での演説とは内容よりも威勢の方が重要なのだ。その勢いは6年前の安倍首相の姿とは180度異なり、これだけの結果を生み出す一因となった。誰もが疑った首相の健康に、不安を持っている者もいまや少数だろう。月日とはいろんな変化を連れてくる。
実に様々な結果を生んだ今回の参院選でもっとも考えさせられたのが、福島県の票が自民党に流れたことだ。原発推進を明確に打ち出している党へ、これだけの痛みを強要されている県の票が集まることは、考えれば考えるほど苦しさを感じてならない。これを自民党は重く、そして強く受け止めてほしいものである。