夏雲の東京。

編集部に缶詰状態が続いている。ちょっくら気分転換にと外の空気を吸おうと出てみたら、きれいな青空に夏雲が広がっていた。7月生まれの夏男は、この雲を見るとテンションが上がる。

夏雲

もう夏至を過ぎた。冬至と並び、僕の意識の中で大きな日である。夏好きにとって夏至は、本番へと向かっていく日でうれしくありながら、夜が少しずつ長くなっていく儚さも連れてくる。そして、この夏至とお盆(旧盆)までの間は『男はつらいよ』の夏上映の作品が無性に見たくなる。夏至が過ぎて感じる儚さを、山田洋次監督も同じように感じていらっしゃるのではないかなと勝手に思い込んでいるのは、夏作品特有の香りによるもので、線香花火のようとも言い換えられるなんともいえない良さがある。

対して、冬至に儚さはまったくない。これより少しずつ春に向かっていき、加えてあと数日で1年で最も楽しいお正月を迎えるのだから。初春ってのもなんとも清々しいもので、冬至を過ぎたら♪もういくつ寝ると〜♪と歌っていいことにしている(笑)。同じく、冬至から大晦日までの僅かな日が、お正月上映の寅さんを見るのに旬の時期となる。こちらは日数が少ないうえ、暮れの忙しい時期だから見るのは困難を極めるのだが。それにしても、夏と冬の作品で香りがまったく異なるように感じるのは、四季を楽しむ日本人だからであり、山田洋次監督だからであり、渥美二郎さんをはじめとする役者さんたちからもにじみ出ているからだろう。

さて夏雲。今日見たのはまだそれほど立派なものでないけれど、いつ見ても小学生の気持ちを思い出させてくれる。汗びっしょりになって遊んだ、宿題以外はなにも怖くなかった楽しい夏休みの日々の元気な気持ちだ。夏雲はドンドン大きくなって夕立を降らせて、でっかい虹を見せてくれることもしばしばあった。この夕立はとおり雨と呼び、すぐ止むことを知っていたから、小学生の僕らはこの雲を見てもイヤな気分にはならなかったなかった。むしろ、青い空にモクモクと伸びていく元気さや真っ白とのコントラストでワクワクさせてくれ、とおり雨がグッと気温を下げてくれることや、降り出した時の香りとかも、夏雲にまつわるすべてが好きだった。今日疲れを癒されたのは、そんないい記憶のおかげだろう。だが最近の東京は、昔のようなスカッとした夕立はほとんど無く、ゲリラ雷雨と呼ばれるたちの悪い降雨が多い。今年の夏はどうなのだろうか。夏本番まであとわずか…、その前に〆切もあとわずか。

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