愛する女性シンガーと問われれば、もうかれこれ30年近く不動のマイベスト3の名を挙げる。ジャニス・ジョプリンと越路吹雪、そして、リッキー・リー・ジョーンズだ。前者2人は、残念ながら活躍している時代をほとんど知らない。ジャニスは昭和45年に、越路は昭和55年にそれぞれ逝ってしまった。そして両者がもっとも活躍したのは、僕らが生まれた頃から5歳くらいまでで、ほとんどの昭和40年男にとって後追いで知り、そこからハマった方も多いことだろう。
とくにジャニスは、ロックの創成期を語る上でなくてはならない存在で、ジミ・ヘンドリックスと並び革命を起こした人だから、ロックマニアたちはその凄まじい世界にふれていることだろう。まだ購入していないが、ソニーが誇るブルースペック2でリリースされたので、“またも”手に入れることになりそうだ。越路との出会いは、強い影響を受けたショーケンがこよなく愛するシンガーとのことで、彼を信じて高校生のときにアナログ盤を買った。ジャケット写真の昭和な風貌にはどん引きしながらも、針を落とすとその素晴らしに震えた。日本の女性シンガーといえばひばりさんが絶対的な存在だが、堂々のナンバー2だろう。彼女の歌にふれたことがないという昭和40年男は多いかもしれないが、だまされたと思って聴いてみてほしい。僕はショーケンに感謝しているほどだ。
僕が挙げた3人のなかで、我々世代にもっともフィット感を感じる存在がリッキー・リー・ジョーンズだろう。ジャニス同様にデビュー前は相当な不良だったようだが、サウンドはジャニスとは違って洗練されたおしゃれな雰囲気をまとって、僕らが中2のときにまさしく彗星のごとく現れた。そのデビューアルバム『浪漫/Rickie Lee Jones』は、スティーブ・ガットやジェフ・ポーカロの2大ドラマーにウイリー・ウイークスがベースをのせる豪華なリズムに、上ものではマイケル・マクドナルドやトム・スコット、バジー・フェイトンなんて超一流ミュージシャンたちを惜しみなく起用してレコーディングされたものだ。レーベルの威信をかけて世に放った歌姫であり、今にいたってもその歌唱はますます輝いている素晴らしいシンガーだ。去年リリースされた最新作も素晴らしいカバーアルバムだった。ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』やザ・バンドの『ザ・ウエイト』などセンスよくセレクトされた曲を、原型を感じさせないほどのアレンジを施し、艶やかな歌唱を乗せている。仕上がりの高さに驚愕させられた作品だ。
その彼女がこの夏来日する。去年ブルーノート東京の公演を見逃してしまったが、どっこい今回はビルボード東京である。あの素晴らしいハコでリッキーの歌声を聴ける。多くの昭和40年男たちの胸に残るデビューシングル『恋するチャック』はきっと演る。こいつは見逃せない!!