吉野家にて280円を考える。

牛丼「吉野家史上最高のうまさへ。」

老舗牛丼チェーン店の自信と愛があふれたキャッチコピーにつられて入店回数が増えた。いやいや、確かにコピーはすばらしいものの、情けないことに僕にとってこのコピー以上に値下げ効果がデカイのが偽らざるところだ。そして行くたびに、そのすさまじいコストパフォーマンスに考えさせられてしまう。紅しょうがも、僕好みの七味も使い放題で、あたたかいお茶が出てきて水を頼めば冷たいのを出してくれる。つゆだくやねぎだくなんて技も許されて280円。ホントに驚異的だとごちそうさまの度に感心しながら店を出る。その激安の会計が、手から手へとキチンと渡されるのもいい。古い人間ゆえ、自販機で前払いというのはどうも小馬鹿にされているようで避けてしまう。

アベノミクス効果が騒ぎになっているが、吉野家にいるとむしろその逆を感じてしまうのは、客のほとんどが最もハイコストパフォーマンスの並盛りで済ませているからだ。100円増しだった頃は大盛りを頼んだ僕も、160円増しの設定に手が出なくなった。以前の480円に対して現在は440円と値下がってはいるが、並の比率よりも圧倒的不利である。加えて、続々と投入した新メニューのオーダーもきっと激減しているだろう。そんな様子を眺めていると、現段階で笑っているヤツなんてホントに少ないのだろうなと思えてならない。

トヨタをはじめとする輸出企業はやっと来た春を謳歌しているかのように見えるが、社会全体で見れば“行ってこい”であり、輸入や原価に跳ね返り苦しんでいる企業も多い。先日、バイクの販売会社の方が「今期は増収減益となる。それどころか赤字は逃れられないだろう」とぼやいていた。年末くらいに、翌年の春から販売する車両の価格を決定する。その決定価格は輸入原価がベースになってはじき出されるのだから、現在はその決定当時より20%以上も原価が高騰したことになる。いまや国内メーカーの販売会社でさえ、海外生産モデルを輸入して売るほど生産拠点のシフトは進んだ。グローバル化に対応したメーカーが喜んでいる一方で、その子会社となる販売会社は赤字転落する…こんなことが日本中のアチコチで起こっているのだ。

僕らのところも、印刷用紙やインクの輸入原材料費が上がっているから、原価の値上がりが秒読み段階に入っている。そんな中で280円は、ますます重くのしかかる。食べる度にコストパフォーマンスに感心させられながらも、そんな頭の痛い問題を考察させられる昨今である。それでも僕は、今宵も牛丼の並盛りをかっ喰らう(笑)。

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