大阪。振り返るとそこは灰色の街?

大阪

一昨日のビルボード大阪で行なわれた河口恭吾さんのライブ終了後に、大阪梅田界隈をうろついた。初めてこの街に来たのは昭和60年の春で、タイガースフィーバーになった年だ。東京発大垣行きの夜行列車に乗り、鈍行を乗り継いでたどり着いた。地下街の広さに驚愕し、何度も迷子になりながら疲れ果てた大阪初日だった。

僕は東京の下町で育ち、活動拠点を浅草や上野でまかなってしまったため、渋谷や新宿といった街はいまだに弱い。六本木や原宿といった若者文化の街も、なんとなく近寄れなかった。その反動だろうか、大阪暮らしでは積極的に街を知ろうとした。住まいが阪急神戸線の神崎川だったことで、梅田と十三でしょっちゅう遊んだ。さらにミナミも知り尽くしたいと、心斎橋の『へのへのもへじ』なる居酒屋でバイトして、音楽仲間とたまるのは天王寺の『不思議の国のアリス』と、大都市を股にかけて飛び回ったのだった。

とくに梅田は大阪駅に流れ着いて初日に知った街であり、神崎川からも近いことからなじみ深い。大阪に移り住むキッカケの一つになった『大阪で生まれた女』の歌詞がしっくり来る街でもあるのだ。“活気にあふれ” “灰色の街” “また人が来る”などなど、梅田駅前の歩道橋から街を眺めるたびに口ずさんでしまう。

懐かしい街を噛み締めるように歩いてみたが、街はずいぶん変わった。大規模な開発が進んでいるなかに、昔ながらの街がグチャグチャに混じりあって、うれしかったりちょっぴり寂しかったり。当時世話になった店がなくなってしまったな、などと歩を進めていくと、突然タイムスリップのごとくまったく姿を変えていない店に出くわす。独特の臭いがしてきたり、変わらないバッチイおっちゃんたちが呑む立ち飲みは健在で、よくよく考えたら当時こうした店を埋め尽くしていたおっちゃんたちの年齢に、ずいぶんと近づいた僕らじゃないか。もうすっかりおっちゃんなんだねってか。新しい施設を求めて歩いている若いカップルはきれいに着飾っていて、センスを感じさせる。ビルボード大阪みたいなおしゃれなハコなんか、当時の大阪では絶対に成立しなかっただろう(!?)。デカイハコもバーボンのようにどこかで大阪らしさがあるハコばかりだったもの。もっとも、30年近くの時間が流れたのだから当然だよ。

歩道橋の上でついつい口ずさんでしまうのは、変わらず『大阪で生まれた女』だった。そうそう、大阪から東京に帰るときの追い出しライブで『不思議の国のアリス』で歌った。そして打ち上げは朝まで続き、オンボロアパートに戻って荷物をまとめてきれいに片付いた部屋を出るシーンまで、はっきりと画像になって残っているのは、それだけ心をふるわせた日々を送ったからだろう。そうやって激しく生きることが、後の人生に強い影響を残すものだ。もっともっと、今を激しく生きないとなんて、大阪はいつも気付かせてくれる街なのだ。

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3件のコメント

  1. 編集長さんの大阪ノスタルジー、今大阪で暮らしてるワタシにとっても心の琴線をくすぐられました。
    ワタシが大阪に住み始めたのも、だいたい同じ頃、高校を卒業した昭和61年からなのですが、編集長さんのおっしゃる通りであれから大阪の街もずいぶん変わったように思います。
    特に梅田はバブルがはじけた90年代後半あたりから再開発で目に見えて変わり始め、最近もグランフロント大阪等ができたりで激変しています。
    でも、正直、グランフロントの空気感は全く大阪とはなじみません(笑)綺麗過ぎて妙にスカスカしてるから、愛着がわかない感じがするんです。寄り添ってねんごろになりたい感覚がわきません(笑)
    梅田地下街も近々変わるみたいですし(アリバイ横丁や立ち飲み屋がなくなる)、大阪らしさがだんだん消えて行くのが寂しくつまらないです。灰色こそが大阪の色だったのに・・・!

    • 共感ありがとうございます。灰色こそがはまさにおっしゃるところで、梅田じゃなくなってきているのは感じました。何でもかんでも、同じような先進都市にしようとするのはもったいないと思います。大阪らしさが消えていくように感じるのは、僕のようなよそ者だけじゃないのですね。天王寺界隈もちょっと…。

  2. へぇ~、最寄り神崎川駅だったんですかぁ。
    ヤザワもエリアは違うけど、神崎川に近いので、川沿いの自転車道を休みの日、よくポタリングしてますよ。

    青春のかけらを置き忘れたぁ~~~♪
    (ショーケンの場合、ここはブレイク長めにして・・・)

    街! Oh!yeah
    (で、柳ジョージがソロ弾きまくりぃ~の、ショーケンがジョージに肩組ぃ~の、耳元でなんか囁きぃ~の、二人で笑ぃ~の、・・・それがやたらカッコええわけよねぇ!)

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