大編集後記。夏特集を振り返る(4)

午前中の講習では、大きな不安をかかえる結果となったが、
午後の実技で不安が大幅に増幅された。
む、むずい。
後方確認を忘れる。クルマの免許を持っていないから、ハンドルを回した経験がほとんどない。
問題が山積である。
着岸なんかとうとうたったの1回も成功はしなかった。

すべてのカリキュラムが終了し、受講した4人に励ましの言葉をくれる教官だ。
「今日の教習を見る限り、たぶん4人とも大丈夫ですよ」
と言ってくれたが、俺と目を合わせようとしないのは気のせいではないと思う。
試験はこの一週間後だ。
不安を抱えながら仕事の合間にテキストを開いた。
ロープをカバンの中に入れ、所かまわず縛る姿はちょっと見方を変えれば変態だな。
わかってはいるが、今は企画を進行させることが重要だ。

格言。
「ページづくりとは人格や人間の尊厳とは無縁である」

何日かはバイクで船舶向け後方確認を練習しながら通勤した。
試験前日はヤッチーと実技のイメージトレーニングを行なった。
そうして迎えた当日は、試験場についても直前までテキストを広げていたのだった。
ところが、学科試験が始まるとわりとカンタンにこなしていけた。
これはたぶん大丈夫だろうと、教室を後にしたのだった。

さあ、ここからは問題の実技だ。
なにせ教習時にはボロボロで、
とくに最後に行なわれるセクションである着岸は一度も成功したことがない。
その他にもバックで目標の方向に進むのが苦手で、
ハンドルというやっかいなものの操作に手こずった。
それにバイクはバックしないのである。
近年味わったことのない緊張でのぞんだのだった。

が、奇跡的にうまくいった。
前日のイメージトレーニングが効いていて、
ノーミスとはいわないまでも教習時よりずっといい。
Go Go Go!!と調子に乗った。
そして最後の難所である着岸である。
これも奇跡的に完璧な出来映えでキマった。
「やったぁ!! こいつは合格間違いなし」
心が叫んだ。

が、油断大敵なのである。
浮かれ気分で下船の際に、なんと川へと落ちそうになる失態を演じてしまったのだ。
なんということだろう、油断以外のなにものでもない。
この失態がどう影響するか?
不安の中で過ごす日々だった。
なんせ落ちれば企画はボツだ。
試験そのものは追加料金で受け直すことができるが、
秋に小型船舶の免許を取ってもあまりおもしろくない。
このタイミングで4ページを新たに企画して、
しかも〆切に間に合わすことがどのくらい困難なことかと苦しい日々を過ごした。
が、ご覧の通り見事合格できたよ。
めでたしめでたし。

このチャレンジはいろいろと考えさせられたよ。
まずね、物覚えが悪くなっている。確実にね。
ロープワークなどの手を使うものも、学科の内容も、
昔の頭にスイスイ入っていくイメージとはかけ離れた自分がいた。
仕事や音楽など、自分の持つ世界は年齢とともに進化している。
より高いレベルへと昇華しているのは確実なので、
これほど自分がダメになっているとは信じがたかったよ。
応用力のおかげなんだよね、巧くなっているのは。
まったく未知のものに対しては、
驚くほど劣化している自分に気付かされた感じだ。
それが一番の収穫かもしれない。
新しいことにチャレンジするのは、
きっと脳や自分自身にものすごくいいのだろうなということが、
身をもって体験できたからね。

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