昨日は新年度初日で、帰りの電車はまるで年の瀬のように酔っぱらいであふれていた。僕も恒例の『浅草秘密基地』帰りだから人のことは言えないが、すさまじい車内だった。
浅草からの帰宅電車は、乗り始めはいつもガラガラで間違いなく座れる。通常だと東京駅あたりで席が埋まるのが、昨日は東京駅ですでにラッシュ状態になり、僕が座った前でつり革にぶら下がった40歳くらいの酔っぱらいが、グラングランと揺れていた。寝ているようでありながら、つり革は離さないど根性である。だが揺れは大きくなる一方で、見ていられなくなり席を譲ろうとしたが状況がつかめていない様子で、抱えるようにして座らせた。もちろん礼を言われるわけでなく、瞬間的に眠りについた彼だった。つり革から崩れ落ちるのは回避させたが、あの泥酔ぶりでは間違いなくその電車の終点である大船駅までいくことだろう。深夜1時過ぎに着いた後に、戻ってくる電車はすでになく立ち尽くすことになるはずだ(幾度となく経験済み)。親切だったか、かえって迷惑だったかと考えさせられながら帰宅したのだった。
また、街のアチコチで社会人1年生を多く見かけた。今日もフレッシュマンたちは街に溢れていて、東京は朝から雨が振り続けて真新しいスーツにはちょっとかわいそうだが、元気はつらつで歩いている姿を見ていると清々しい気持ちになる。だが、新年度に社会に出てくる彼らの人数は減少の一途をたどっている。少子高齢化が進む一方なのだから仕方ないが、ということは前述のような新年度のラッシュは、年々緩和されていくことになるだろう。それでなくても、最近の若者は酒を呑む人口も減っているらしいから、よけいに拍車がかかるはずだ。なんだか寂しいのう。
みなさんが社会に一歩を踏み出した時はなにを考えていただろう。バブルまっただ中だったから、さぞ希望に燃えていたことだろう。僕は本格的にミュージシャンを目指していたから変則的で、街で見かけたような社会人としての一歩を踏み出した初々しい日はない。その代わり、覚悟を決めた日というか、そんな想いに浸るために高校の卒業式の直後に、一泊の1人旅に出かけた思い出がある。小さな旅館で夕食を取りながら晩酌し、なんだか快い孤独感を味わう。そして、これから厳しい社会へと出て行くのだなと噛み締めたのだった。部屋に戻ると、持参したウイスキーをチビチビやりながらギターをただひたすら磨く。高校卒業と音楽人生のスタートを祝って自主開催したライブで使う相棒を、2本抱えての1人旅だったのだ。丁寧に、じっくりと時間をかけて静かな部屋で磨き続けた。あの日入念に磨いたギターが今もしっかりといい音を出してくれているのはうれしいことだ。
フレッシュマンたちの姿から、そんな自分にとって社会へのスタートを切った夜を思い出した。真新しいスーツに身を包んだ彼らと、あの日の僕は同じ気持ちだろう。29年の時を経て、いまだ社会の中で夢へと向かってもがいていられるのは悪くないことだな。そして、フレッシュマンたちが暴れられる社会となるように、微力ながら貢献したいものである。