先月発売された昭和40年生まれの推理作家・新野剛志の新作『美しい家』が好評発売中だ。
新野が小説家になったきっかけは一風変わっている。大学卒業後、6年間の旅行会社への勤務を経て、1995年に退職し、キャンプ道具を背負い放浪生活に入る。それはほぼ失跡状態のホームレス状態だったようで、社会に戻るのにどうするかを考えたときに、小説なら鉛筆と紙があればできると考え、そこから“作家活動”をスタートさせたのだそう。もともと小説が好きでずっと読んできたそうだが、新野にはその才能があったのだろう。99年に『八月のマルクス』で江戸川乱歩賞を受賞し、見事に作家デビューをはたした。2008年には『あぼやん』で第139回直木賞候補に。近著に『素人がいっぱい』(東京創元社)、『パブリック・ブラザーズ』(双葉社)、『中野トリップスター』(新潮社)、『恋する空港 あぼやん2』などがある。
その新野の新作『美しい家』が好評発売中だ。高校時代に姿を消した姉の行方を探し続ける主人公が、夜更けの住宅街で若い女を“拾った”ことで思いもよらない事件に巻き込まれていくミステリーだ。やがて明らかになるその女の過去は、家族というものが孕む悲しみやおぞましさを思わせ、幸福を求めるがあまり転落してゆく人間たちの業を、まざまざと見せつける。タメ年作家が執筆した新作に注目したい。
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