昨日書いた件について、友人知人から直接のメールを多数いただき、あらためてまずいラーメンの支持が高いことを知った僕だ。「俺が知っているまずいのはこうだ」とか自慢するヤツ数名。だがこれは類友なのかもしれないと思わされれるのは、読者さんからはノーレスであること。広く皆さんに今一度問いたい。あなたはまずいラーメンを許容できるか?
ラーメンと昭和40年男の関係を追ってみると、もじゃもじゃ頭の小池さんに行きつくのではないか。彼の存在がそのままラーメンに対する欲望の原型を作った。小池さんが食べているのは袋入りのインスタントラーメンで、その食べっぷりは胃袋を直撃した。再放送で見ることの多かったオバQだから、ちょうど腹が減っている時間帯である。この脳裏に刻まれたハングリーさを抱え、いつもラーメンが食いたかった。
そしてごくたまに食卓に上ったラーメンに、小池さんからいつも受け続けた影響からか目を輝かせるのだが、我が家で食事として出てきたラーメンはいつもうまくなかった。皆さんの食卓がどうだったかはわからんが、我が家で「今日はラーメンよ」と出て来るのは、『サッポロ一番』の醤油味か味噌味で、どちらの場合もスゴく薄味だった。単純にお湯が多いのである。「インスタントは塩っぱくて体によくないからね」と、今もバリバリに働く73歳のお袋の口癖だ。だから僕は昨日もここで述べたように、醤油を湯で薄めてごま油をかけたようなスープのまずいラーメンを好んで食すことができるのかもしれない。
そんな僕のつらいラーメン人生に光を灯してくれたのは、突如として登場したカップラーメンである。これは自分で湯を注げるから薄くならず、標準スープの塩っぱさを楽しめ、天国への階段を登ったかのごとく幸福感を味わったのである。偶然の奇跡によって連れて行ってもらうラーメン屋の味も究極だったが、コイツはごちそうすぎて評価の対象にならなかった。あれはラーメンでない。外食であるからレストランでハンバーグを食うくらいの、上位ランキングの食い物だったのだ。とまあ、貧乏人の原風景と皆さんとでどのような違いがあるかはわからんが、昭和40年男にとってカップラーメンはひとつのごちそうだっただろう。そして現代人にもカップラーメンは愛されていて、まさに国民食となったのだ。
以前、日本を代表するコピーライターの前田さんを取材したことがあり、彼が日清カップヌードルのCMを担当した時のコンセプトが、腹が減った時はトコトンうまいのがカップラーメンとのことだったそうで、そのアンサーが懐かしのCM「Hungry?」として生まれたそうだ。
なるほどと頷いたのは、昭和40年男の創刊第3号でチャリンコの旅を実践したときの記憶だった。5月だってのに気温ひとケタの極寒のなか、風雨にさらされながらペダルを漕いだ。田舎道に食う場所はほとんどなく、腹ペコの体は経験したことない程に冷えた。そこでやっと見つけたコンビニで手にしたのは、なんの迷いもなく日清カップヌードルのスタンダード。この世にこんなうまいものがあるのかと本気で思ったのは、前田さんが現場でかかげたコンセプトどおりだった。
次号の特集には、そんな僕らのソウルフードである日清カップヌードルが登場する。さて問題です。今回『昭和40年男』はどんな特集を組んでいるのでしょう? 発売が近づいてきているから、これからちょっぴりずつ小出しにさせてもらうぞ。