もうずいぶんと昔のような気がする。いいーっ、いいーっ、いいーっと喘いだ…、失礼しました。イイ(2011年)、イイ(11月)、イイ(11日)と、コイツは縁起がいい日だと打ち込んだ『昭和40年男』の記念すべき第10号の話だ。
ご覧のとおり、特集タイトルを『憧れモノ大全』として、昭和40年男たちの物欲を刺激したモノの特集を組んだ。当時の葛藤は大きかったものの、ウォークマンを表紙で使う。しかも一点で勝負するのは突然湧いたアイデアであり、とんでもないワガママを強行したのだった。調べあげてくれたスタッフは、コレクターの島田さんを探し当てて、協力を依頼。島田さんは聞いたこともない出版社の、わけのわからんタイトルを名乗る雑誌に快く協力してくださり、晴れて表紙のモデルとなったのだ。このウォークマンはなんと未使用のデッドストック品で、箱に入ったままで借りた、まさにそのまんま箱入り娘だったのだ。
この美しいウォークマンと出会えたことが、結果的にはそれ以降に続く表紙の大リニューアルとなった。それまでのゴチャゴチャなんでも入ってる表紙(これも好きだ)から、特集を象徴する一点勝負表紙への大転換となり、今回の沖田艦長まで続いている。その意味でもこのウォークマンと出会えたことは大きい。
絶対にコレしかないと確信させたのは、この第2世代ウォークマンのデザインによるものである。30年以上前のモノとは思えない、今でも十分にグッドデザイン賞を受賞できそうである。バイク関連の仕事をずっとしているせいか、デザインの耐久性という言葉をチョクチョク使う。古くならないデザインをまとった名車は数多く存在するのだ。逆に、耐久性のないデザインのバイクの方がむしろたくさんあり、プロダクトの難しさとおもしろさを感じさせてくれる。もちろんバイクはパフォーマンスや技術革新なども名車の要素として重要である。だがそれらが優れているのにデザイン的に弱いバイクで、歴史上に名車として輝いているのは実は少ない。
なんてことを日々考えてきた僕だから、この特集を作っている段階でハッとさせられたのだ。ウォークマンにこれほどのデザインが施されていたとは、流行った当時の僕には到底想像できなかった。その発見の興奮のままにこの表紙が生まれたことになる。そして、今回の特集でもウォークマンは絶対的な存在で、再び島田さんに協力を要請したところ、今回も快諾してくださった。ありがとうございます。まだ特集内容は明かさないが、こうしてウォークマンを擁して期待をあおろうとする、つくづくイヤなヤツだ僕ったら。フフフ。乞うご期待!!
この表紙で、初めて本の存在に気づいたのでした。即、買いですよ。傑作、ですね。
この号とチャリンコの号が、個人的には表紙ベストワン・ツーです。