師走にふさわしいアルバムを10枚セレクトして、不定期連載でご紹介している。昭和40年男だったら馴染みやすいだろうとの聴きやすさと、暮れの疲れをあまり強く刺激し過ぎないサウンドをと留意しながらチョイスしているつもりだ。今日お届けするのは、僕らの世代にとってはまさにど真ん中ストレートのボズ・スキャッグスの名盤から、暮れということではまさしくこれだろうと『ミドルマン』にした。
中3になったばかりの4月に届けられたアルバムジャケットに、中坊の目は釘付けとなった。網タイツの太ももを枕にしてタバコを吸うなんて、なんちゅううらやましいこっちゃと興奮できるのだから、当時の中学生は安いなあ。レコード店でこのジャケットを30㎝サイズで眺めては、こんな大人になりたいと憧れたものだ。ボズといえばまず名作との誉れ高きは『シルク・ディグリーズ』となるが、昭和40年男だったらこっちだろう。2曲目に収録された『ブレイクダウン・デッド・アヘッド』がシングルでヒットしてラジオから流れていた。なんともカッチョいい、それまであまりふれたことの無いタイプのロックであり、ハードロックに傾倒していた当時の僕にとってこのアルバムはあくまで観賞用であり、買う対象ではなかった。だが、アピールは強烈であり、後に購入したという友達から借りてテープに収め聴き込んだ。
雑多に音楽が流れていた。ハードロックが好きだといっても『ザ・ベストテン』は必ず見て、ジュリーに痺れていたし、後にAORと確立されるこんな音楽も飛び込んできた。傾向と対策なんかなく、おもしろそうなものや新しいものをDJたちはパワープレイして、僕らも雑食の獣のごとくおいしくいただけたのは、幸せなことである。こんなにも特上の大人のアルバムに、中3のくそガキが背伸びしていたのだから。
『ミドルマン』といば針を落として(僕の場合はカセットデッキのプレイボタンを押して)いきなりくる『ジョジョ』のカッチョよさにやられた。そしてこの曲の雰囲気が師走にしっくりと来る。アルバム全体に流れる雰囲気も、暮れの疲れを十分に癒してくれるものであり、酒とよく合う。コイツをかけてあたり目ではダメだ。焼酎はかろうじて許すが、せめてつまみはチーズにしてほしい。そんなアルバムである。
バラードはどこまでもバラードらしく響き、トトのジェフ・ポーカロのドラミングによるゴージャスビートも軽快に押し寄せてくる。大人のクリスマスはこれでしょって、クリスマスなんか関係ない僕が語っても説得力無いが、もしも聴いていない方に説明するならそんな夜が似合う1枚だ。子供にはわからない世界だといいたいところだが、よくもリアルタイムで聴いていたものだと感心してしまう。多くの昭和40年男が体験したサウンドでもあり、今またもう一度キチンと聴きたい1枚でもあるのではないだろうか。