師走の忙しい日々を過ごしていることだろう。そんな昭和40年男たちに、1人で一杯呑りながらゆったりと聴くのに適したアルバムを10枚セレクトして、短期不定期連載でお届けする。一昨日に続いて2枚目だ。
暮れの激務でグッタリ疲れて帰宅して、プシュツ、グビッ。軽いつまみで呑みながら夕刊とニュース番組をチェックした後、さあ、ゆったりと疲れを癒す濃い酒でも呑るかとのタイミングでプレイボタンを押そう。深夜1人のリビングで、家族を気にしながら小さなボリュームでも楽しめる。ふーっ、と長いため息も似合う。スティングの隠れた名作『ソウル・ケージ(The Soul Cages)』をおススメする。
昭和40年男は、ポリスをリアルタイムで感じることができた。上の世代がビートルズの幸せなら、僕らはポリスだと言いたいほどの存在だった。ポリスのスリル満点の演奏は楽しいが、疲れた暮れの夜にはちょいと刺激が強すぎる。そこでスティング様の登場となるわけだ。ポリスとはまったく異なる音楽であり、でもカッチョよさは変わらず味わえる。そしてスティングの数あるアルバムの中でもコイツはすべてが上質で、12月となればもうこれに決まりだ。
コートの襟を立てて凍える夜を少し背中を丸めて、くわえタバコで歩く自分をイメージしながら聴く。適切な表現でないが、地味な作品が多く全編に霧がかかったような暗さがある。それが大人の男にはしっとりと響く。いいウイスキーは様々な表情を見せてくれる。音楽にするとこうなるのだという仕上がりで、コピーっぽくおススメするとしたらこんな感じ。
人生ってヤツを振り返り、今宵はしばし過去への旅に出よう。
ほろ苦い時間も悪くない。
天才にもそんなことがあるのかと信じ難いが、このアルバムは極度のスランプ後に発表されたとされる。そんな壁を乗り越えたから完成したアルバムだからか本当にすばらしいのに、なんとも世間の評価が低すぎるのは、渋すぎるからだろう。実際僕も年齢とともに好きになっていて、今となってはこれを昭和40年男が聴かないのはもったいないとまで断言できる。そして『ソウル・ケージ(The Soul Cages)』を味わう旬の時期が冬であり、忙しくがんばって疲れ果てた夜にこそ聴いていただきたい。
確かに聴く機会の少ないアルバムです。さっそく今日聴いてみよう。
どうでした? あらためてうなったでしょう。