12月に聴きたいアルバム “ザ・ベストテン”。ザ・バンド『南十字星』。

ザ・バンド 南十字星師走の忙しい日々を過ごしていることだろう。そんな昭和40年男たちに、深夜1人で焼酎を呑りながらゆったりと聴くのに適したアルバムを10枚セレクトして、短期不定期連載でお届けする。

音楽ってのはミュージシャンの投げるすべてをしっかりと受け取る聴き方と、コチラの嗜好だけでワガママに聴くのと2つの楽しみ方がある。そのブレンド加減までも楽しめるのが、音楽の持つ懐の深さだ。たとえば、ジミ・ヘンドリックスはすばらしい音楽を提供してくれるが、気を抜いて聞くことが許されない。聴くたびに、なにか新しい発見をせねばならぬとの、音楽的な戦闘モードで対峙する。今日ご紹介するアルバムは、そんな戦闘モードがまったくいらず、ゆったりのんびりと聴ける1枚だから、暮れの疲れを癒してくれることだろうと選んだ。

1枚目はコチラでもさんざん語ったザ・バンド『Northern Lights – Southern Cross/南十字星』である。名作がそろうザ・バンドのアルバムからもっとも好きな1枚を選べといわれたら『Music From Big Pink/ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』とするだろうが、暮れの疲れを癒すとなれば断然コチラになる。収録された曲のどれもが、ゆったりと響き渡るのだ。サウンド・リズムともに落ち着きがあって、まさに大人のための仕上がりとなっている。

アップテンポやミディアムテンポの曲は耳ざわりよく響く、ザ・バンドのアルバムの中ではもっともスリルのない仕上げになっている。だからのんびりまったりと楽しい気分で聴けるのだ。一方のバラードは名曲ぞろいで、染みる曲が胸にググッと迫る。おおげさな感動ソングでなく、あくまで「ググッと」なのがよい。疲れた深夜に「マイ・ウェイ」みたいなドッカーンとしたバラードはよけいに疲れるでしょう。なんだかいいなこの曲はという、じんわりとした感動を味わえる。こうした楽しみ方ができるのは40代の後半になったがゆえだ。その年輪を確かめるのにも格好のアルバムかもしれない。

ウイスキーとタバコが似合う。ジャケットが焚き火だからかもしれないが、このアルバムを聴くシチェエーションでベストイメージなのは、キャンプ道具を積んで出かけたシングルツーリングで見つけた季節外れのキャンプ場で、焚き火の前でウイスキーのストレートを呑りながら聴くというもの。そんな贅沢な時間がとれない激務の中にいる昭和40年男たちだから、家族が寝静まった1人のリビングでアタリメをつまみに焼酎をチビリチビリってので、ささやかな幸せを楽しんでほしい。

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