さあ、長く重苦しい話が続いてしまったので、ここら辺でカラッといきますわ。
次号の企画がガンガン進んでいて、とてもおもしろい夏特集になることでしょう。
つうことで、自分の夏の想い出なんぞを拾い集めているわけで、
これはなかなかおもしろい時間の旅ができて企画するのも楽しいのだ。
夏といって真っ先に出てくるのが、実はRCサクセションなんだよね。
あのライヴが忘れられないのですよ。
高2の夏だから17歳のときのこと、
横浜スタジアムでサム・ムーアとチャック・ベリーとジョイントでやったというスゴイ企画を覚えてる?
昭和40年男だったら行った人もいるでしょう。
当時はちょっとRCを軽視し始めていた不届き者でもあった俺だ。
というのもブルースやR&Bにはまっていって、どんどん深く深く掘り始めていたころだからねえ。
もっとも楽しみにしていたのはサム・ムーアだったかもしれない。
ちょうどサム&デイヴの“ホールド・オン”をカバーして、
タイトに歌うことの難しさと魅力に夢中だった。
それに比べたらRCは…。
ちょうどこの年は、春の資生堂キャンペーンソングに清志郎と教授が一緒にやった
“い・け・な・いルージュマジック”が大ヒットして、
なんだかポップスになっちまった。
宣伝ポイのも嫌だったな。
資生堂くらい金があると清志郎をここまでいじって、
教授の書いた曲歌わせて、チューまでさせるのかってね。
なんだよー、全然ハングリーじゃねぇじゃんって。
さらに続けてRCから“サマー・ツアー”が出て、
コイツもなんだかピコピコしていて、
「おい違うだろう」なんてますます考え込んでしまった。
まっ、青く若い17歳の小僧だったのさ。
そんな想いを抱いて真夏の横浜球場へとバンドメンバーで出かけた。
あぢい〜!
が、若いということはすばらしい。
そのメチャメチャな暑さが、これから始まるショーへの期待に変えられたのだから。
ギッシリ埋まった客が期待しているのは完全にRCで、
オープニングをつとめたサム・ムーアにとっては完全にアウェイとなっていた。
嘘だろ、あのサム&デイヴのサムだぜ。
きた〜っ“ホールド・オン”だ〜っと涙している俺が見たのは、
やっとパラパラと立ち上がる観客の姿だった。
嘘だろ、“ホールド・オン”だぜと。
そうだねぇ、20分の1くらいだったかな、
とにかく立っているヤツは少数派で、みな次のRCの出番を待っているのだった。
でも大満足だったなあ、本物のソウルシンガーを生まれて初めて生で見たのだから。
そしてRCが登場すると会場はもう最高潮だよ。
清志郎も気合いが入っていて、調子も絶好調だった。
そう、いま思えばこの日を一番楽しみにしていたのは彼なんだろうなと。
尊敬するビッグネーム2人と同じステージに立てること、
それをパワーに変えられるのはさすが清志郎だ。
後のインタビューで、この直前頃から少しの間は
活動がつまらなかったというのを読んだ記憶がある。
そんなどんどん売れていくからこそ感じる閉塞感だったり、
音楽ビジネスに巻き込まれている日々を
このライヴはぶっ飛ばしてくれたのではないかな。
教授と矢野顕子がステージに登場したときは、
「えっ、ちょっとルージュはやめてくれよ」
とホンキで思ったがそれはなかった。
そしてこの日、ペコペコうるさいはずの“サマー・ツアー”は
すっかりお気に入りの曲になってしまったのだ。
夏の野外でグイグイ押してくる演奏で聴かされると、
やはりすばらしいなとすっかり印象が変わった。
うん、高2のロジックなんてたいしたことはないのだ。
“ひび割れたコンクリート 暑い夏”と歌う清志郎に
離れていた気持ちがどんどん戻っていった。
RCサイコーと楽しんだのだった。
しかしこの後、信じられない光景が…?