企画を考えているときにふとタイムスリップしてしまうのは、『昭和40年男』の特性ゆえ仕方ないことであり、むやみやたらと入り込まないようにしなければならない。ついつい深みにハマってしまい、時間のムダになることがよくある。だが、ムダの中から生まれてくるものもあるからなんとも悩ましくもある。これは編集会議でもしばしばあることで、先日ハマったのはカレーである。国民食であり、今の子供たちも大好きなメニューである。だが、昭和40年男こそがカレー世代なのではないかとの仮説のもと「俺たちカレーで大きくなった」をタイトルとして、しばし議論を白熱させた。さて、この企画がカタチになる日が来るかどうかは…、今のところまったくわからない。
表紙はキレンジャーだろう。ゴレンジャーに我々が夢中になったことが、先の仮説が成り立つ要因ではないかと考えた。うまそうにカレーを頬張る姿に大きな影響を受けた。カレーで騙される姿になんてこったと思いながらも、キレンジャーなんだから仕方ないともあきらめがついたのは、カレーの魔力を知っていたからだ。
もう1つの大きな現象はヒデキがバーモントカレーのCMを担当したことだろう。子供にカレーの魅力を強烈にねじ込んできた。大人たちには不満だったと考えられるが、そもそも戦中育ちの僕の両親はカレーの魅力をあまり知らなかったから、辛くないことに不満はなかっただろう。北村家は、バーモントカレーと共に長い年月を過ごした。牛肉が入ることは絶対になく、豚のコマが我が家の定番で、たまに豚のひき肉なんてこともあった。ニンジンとジャガイモとタマネギがゴロゴロと入った定番カレーは、半ドンで終った土曜日昼食のお楽しみだった。そしてさらに、給食でもカレーシチューは子供たちを虜にした。大好きなメニューのトップに君臨し、ハングリーな僕らを満足させてくれたものだ。
我が家のカレーが進化を遂げたのは、修学旅行のお化け屋敷で使う工作が前日になっても仕上がらず、友達宅で遅くまで踏ん張っているときの夕食に出してもらったカレーで、コイツが衝撃的なうまさだった。外食することが贅沢だった時代であり、どうせ外食するなら家では食べられないものを選択するから、家で作ったカレー以外を口にすることはまずなかった。それに土曜日に出てくるバーモントカレーで十分満足だったのだ。給食以外では初めて口にした家の外のカレーだったかもしれない。衝撃はメガトン級に大きく、思わず聞いた。「おばさん、このカレーなに?」と。そこで教えてもらったS&Bのゴールデンカレー中辛との名称を胸に刻み、家に帰るなり母親に伝えた。「のりん家のカレーすげーうまいんだ。S&Bのゴールデンカレー中辛だってさ。こんどウチでも作って」と、衝撃を興奮に変えて伝えたのだった。次のカレー曜日の食卓に、のりん家で食べたカレーが再現された。ニンジンが多かったことと、肉が角切りでないことを指摘すると、当然ながら叱られた。「母さんの作ったもんに文句言うんじゃないの。角切り肉は高いんだよ」と。そうか、高いのかとあきらめたが、味の方は大満足だった。北村家のカレーが格段に進化した瞬間で、小学6年生のときだった。
西城秀樹がバーモントカレーの歌を歌い始めたのが昭和48年で、これは強烈に我々の意識の中に入り込んだ。そして昭和50年に始まったゴレンジャーによってカレーはその地位を確立させ、そして昭和52年に我が家でカレー革命が起こったのだ。そして今号の『夢、あふれていた俺たちの時代』で取り上げた激辛ブームにのって発売された『LEE』や、次々と街に開店したエスニック系の料理店などで、カレー道を極めていった。かつて『昭和40年男』の企画で、史上最高(!?)のカレーレシピを完成させるに至った僕だ。
きっと皆さんにもカレーの歴史があることだろう。それは昭和40年男たちの成長と、カレーそのものの市場成長と進化がシンクロするからなのである(爆笑)。
毎月ネット購入しております。これ読むと自分ちのカレーの歴史を語りたくなりますねえ。ウチの
子供の時のカレーはSBのレインボーカレーで、シャバシャバでかけると黄色くなったご飯粒の上に具が
乗っている感じで箱の写真のようなご飯の上にどっかと乗っかっているカレーは空想上の世界でしたね。
「ウソだろこれ…」て感じで。あと肉や野菜は炒めないでそのまま煮込んでいたようであまりおいしい
くなく晩飯で出てもテンションは上がらなかった気が。だから母親には悪いのですがレトルトのボンカレーのほうがムチャクチャうまかった記憶があります。いまはカレールーも進化したのか少し煮込んだだけでトロトロになり箱の写真に近い物が出来て隔世の感ありです。「俺たちが食べてきたもの」的な特集も面白いかもしれないですね。(やってたらすいません)初めて食べた○○の味とか俺流の食べ方とかね。個人的に期待してます。
僕ら世代にとって、カレーの歴史は家庭の歴史でもありますよね。たしかにウチのバーモンドカレーもシャバシャバでした。それと、おっしゃる通りの感じの特集はどうだろうとの議論から、カレーに発展したのですよ。鋭いです。さて、どうなることやら。