ソニーは、世界で初めて35mmフルサイズのCMOSイメージセンサーを搭載したコンデジ『サイバーショット DSC-RX1』を11月16日より発売する。
近年、コンデジの高画質化への流れは凄まじいものがある。大きめの撮像素子と、低倍率でF値の小さな明るいレンズを組み合わせることで、一眼レフに迫る表現力を追求したモデルが増えてきているのだ。リコーのGRデジタルシリーズなどがその草分けで、ソニーの『DSC-RX100』などもそのひとつだし、先般発売されたシグマの『DP1/2 Merrill』はその急先鋒といえよう。
撮像素子といっても、一般にはよく知られていないかもしれない。デジタルカメラの描写性能を大きく左右する要素が“レンズ”と“画像エンジン”、そして“撮像素子”(イメージセンサーなどとも呼ぶ)だが、このうち撮像素子は、レンズから入力される情報を画像として取り込む役割を持つ部分で、フィルムカメラにおけるフィルム面に相当する。この撮像素子が実質的な写真サイズである解像度を規定し、ダイナミックレンジやノイズなどに強い影響を及ぼす。上級一眼レフカメラでは従来のフィルムサイズを基本とする35mmが一般的で、中級一眼レフやミラーレス一眼、高級コンデジではAPS-H、APS-C、フォーサーズ、そして一般的なコンデジなどでは1/1.7インチ、1/1.8インチ、1/2.5インチと、徐々に小さいサイズの撮像素子が使われる。同じ画素数ならば、サイズが大きいほど画素あたりの受光面も大きくなるため、より高い描写性能が得られるが、コンパクト化は難しくなり、価格も上昇してしまうからだ。
ところが、この『DSC-RX1』には、コンデジにも関わらず35mmフルサイズの撮像素子が搭載されている。ハイエンド機のみに使用されてきたフルサイズのイメージセンサーと、専用レンズならではの高いマッチングが生み出す高精細な画像が最大の特徴だ。採用された35mmフルサイズ“Exmor”CMOSイメージセンサーは、APS-Cサイズのイメージセンサーと比較して約2.3倍大きく、レンズが集めた光を余すことなく受け止める。また、2,430万という高い解像度により、細部に渡るまで忠実な描写が可能だという。
これに、開放絞り値F2の明るい大口径レンズ「ゾナーT*」レンズを組み合わせる。手のひらに収まる小型化を実現するため、名門カールツァイス社の技術を活かした独自の薄型非球面レンズ「AA(Advanced Aspherical)レンズ」を採用し、レンズの繰り出しがないインナーフォーカス方式の採用によって、鏡筒の小型化を可能にしているという。また、滑らかで美しいぼけ味を生み出すため、9枚羽根の絞りを採用。さらに、ゴーストやフレアの発生を大幅に削減して高い描写性能を実現する多層膜「T*(ティースター)コーティング」がほどこされている。
レンズに合わせたチューニングが可能な点はレンズ一体型カメラだからこそ。レンズと撮像面の位置をミクロン単位で調整し、画像の周辺部までも忠実に解像する優れた画質と、ISO100~25600の幅広い感度を可能にし、デジタル一眼レフカメラのハイエンド機にも匹敵する高画質撮影を実現している本モデル。予想実勢価格は25万円前後と高価ながら、実に物欲をそそる。久々に「やってくれたか、ソニー!」と快哉したくなる一品といえそうだ。