【S40News!】銀幕界夢のコラボ!『東映まんがまつりVS東宝チャンピオンまつり』開催。

応援に駆け付けたしたまちコメディ映画祭in台東の実行委員であるいとうせいこうさんと東映アニメーションの“顔”ペロ (C)東映アニメーション

去る9月14日、東京浅草の映画館・中映劇場にて『東映まんがまつりVS東宝チャンピオンまつり』という夢のようなオールナイト上映が行なわれた。

子供の頃、夏休みのお楽しみの一つと言えば『東映まんがまつり』と『東宝チャンピオンまつり』の銀幕2大祭りだった。普段テレビ漬けの我々だったが、大きなスクリーンで味わう怪獣映画やヒーローたちのダイナミックな活躍には特別なものがあった。だが、そこには当時大きな問題があった。どちらか片方を選ばなくてはならないという究極の判断が求められたのだ。当時映画館の子供料金は1,000円足らずだったと思うが、これを2回も使えるなんてごく一部のブルジョア過程の特権でしかなかった。増して、地域によっては映画館が町に1館しかなく、強制的にどちらか片方を見るほかないということもあっただろう。

そんな夢でしかなかったコラボレーション企画が、東映、東宝という日本映画界の長年のライバル同士の垣根を越え、40数年を経た今、ついに実現したのだ。イベントを主催したのは、毎年この時期に浅草上野界隈を舞台に開催されている『下町コメディ映画祭 in 台東』の実行委員会。もう、この企画が実現するまでにどれだけの苦労があったのか想像すらできない。かつての祭りの賑わいを知る昭和40年男を代表してお礼を申し上げたい。


トークショーでは2大まつりの闘いの歴史を振り返り、大いに盛り上がった

イベントでは、上映に先だって、両祭り真っ盛りの頃の事情に詳しい早川優氏と特撮ライターの中村哲氏を迎えてのトークショーが行なわれた。トークの内容は、昭和44年から始まった東映まんがまつりと東宝チャンピオンまつりの直接対決の歴史を振り返り当時の思い出を語っていくというもの。万博が開催された45年やミュンヘン五輪があった47年など、その年ごとにあった様々な作品タイトルがあったことなどをなぞりながら、ここでしか聞けない裏話や恋ネタ話などで場内は大いに盛り上がった。手前味噌ながら、まるで弊誌の「夢、あふれていた俺たちの時代」を追想するようでもあり、筆者もついついのめり込んでしまった。

トークショーの後はお楽しみのジャンケンによるプレゼント争奪戦。中映劇場の倉庫に眠っていたという当時の貴重なポスターが出品された

そしていよいよ映画の上映開始。今回用意されたのは、昭和45年夏の両祭りで上映された『柔道一直線』、『タイガーマスク ふく面リーグ戦』、『海底3万マイル』(以上東映まんがまつりより)、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦南海の大怪獣』、『アタックNO.1 涙の回転レシーブ』(以上東宝チャンピオンまつりより)の計5本。時間の都合で当時のラインナップすべてというわけにはいかなかったが、それでも上映時間は全部で5時間弱というてんこ盛り状態。しかも作品名を見ればいかに濃厚な内容か想像できようというものだ。

普通ならここで取材関係の人々は退場、というところだが、そんなもったいないことはできない。筆者は睡魔と闘いながら全作ぶっ通しで鑑賞させて頂いた(『海底3万マイル』のあたりがかなりきつかったが)。『柔道一直線』など、一見解りきっているような作品でも、いま改めて見ると当時の時代感覚がガンガンよみがえってきた。決して丁寧な作りとは言えないのだが、力業でねじ伏せるような勢いが体中に伝わってきた。そのスピリッツは他の作品に関しても同様。我々はそんな勢いに育てられたんだなと再認識した次第。このような夢の企画、そう簡単に実現できるものではないと思うが、今後も第2弾、第3弾と続けてくれれば、そして欲を言えば今の子供たちが見られる時間に上映して、親子の対話につなげてもらえればと願うものだ。

ところで、イベントが開催された浅草の中映劇場だが、近く閉館することが決まっている。これにより、明治以来、日本映画の聖地といわれた浅草から、映画館が完全に消えてしまうことになる。時代の流れとは言え、あまりにも寂しい。せっかく東京スカイツリーの開業で賑わいを取り戻した浅草なのだから、ぜひ近い将来、復活して欲しいと思う。

<編集部・足立謙二>

特撮とSFと鉄道を愛する自称昭和キュレーター。1年のギャップと闘う昭和41年男。

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