(vol.02) 巻末インタビューの宇崎竜童さんの現場便りをお届けしたい。
この企画は創刊号で特集した「10年後の自分計画」の中で、
ちょうど10歳上の人のインタビューを掲載したところ評判がよかった。
そこで、あえて年齢を縛らず、僕らにとって兄貴分的な存在のみなさんに
話を聞くというインタビューを連載で始めることにした企画だ。
何人かの候補をリストアップして取材を申し込んでみたものの、
創刊号に続いて、またしても断られまくり (泣) 。
そんななか、運よく宇崎さんが快く引き受けてくれたわけだが、
これが巻頭で特集した 昭和50年 とうまいリンクになった。
昭和50年は「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が大ヒットした年だったのだ。
ちょっと間抜けではあるがこれは偶然で… うん、ラッキーも実力のうちだ (苦) 。
実は2年ほど前にもインタビューさせていただいたことがあり、
再会ということになった。
「○○の際にお世話になったものです」
「あー、あのときの」
よかった。なんとなくではあるが覚えていてくれて、
和やかにインタビューがスタートした。
この現場での俺の立ち位置はまさに編集長で、
現場にはライター、カメラマン、編集担当者として副編の小笠原までも現場にいるという
『昭和40年男』にとってはかなり豪華な布陣となったのだ。
もっともシンプルなのは、自分で写真を撮って、編集して、書くという一人取材だから
これに比べると豪華さがわかるだろう。
ま、そんな取材も実は好きだったりするのだけど。
宇崎さんはサービス精神が旺盛な方で、ドンドン笑いにもっていってくれた。
気遣いの細やかな方だなあという印象である。
記事冒頭の玉音放送が流れたから生んでもいいというくだりでも、
そんな日本がすごいことになってる時に両親もよくやったよねぇと、
まるで他人事のように笑わせてくれる。
どの話もキチンと落としてくれるから、2時間の取材中はずっと笑いが絶えなかった。
この日、俺にグッときたのは
20年近い先輩が、未だにもがき苦しんで曲を生みだしていること、
つくりにこだわっていることだ。
これだけ名曲の数々を生みだしてきて、まだ足りないと言う。
完全無欠の名曲を生み出そうと努力している姿勢に感動しないわけがない。
いやあ、スゴイ人はドンドンすごくなるということを、また教えてもらったよ。
姿勢なんだよね。
俺にとって宇崎さんの曲というと、
P.15 の小学4年生通信で書いたとおり
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で迷子になったという、アホな経験がある。
友達3人で土曜日の休み時間に突如盛り上がったのだ。
「今日、ダウン・タウンが歌っている横浜に行ってみようぜ」と。
俺の育った東京都荒川区という下町とは
まったく違う世界なのだとイメージができあがっていた。
髪の長い女がウジャウジャいて、異国情緒あふれていて、
すっごくオシャレで、なんとなく不良っぽい街。
宇崎さんみたいな悪そうでカッコイイ人もウジャウジャいて、
それは小学4年生の俺たちには刺激が詰まりまくったパラダイスに思えたのだよ。
横浜を目指して電車に乗った。
これは少年たちにとって大いなる旅だったのだ。
が、行ってみるとイメージとまったく異なる、おもしろくも何ともない街並みにビックリした。
横浜駅前のデパートの屋上でゲームをやりながら「どうする?」を繰り返し、
このままじゃつまらないから歩こうとズンズン行ったら元に戻れなくなり、
交番に駆け込んだという情けない話だ。
当時習っていた剣道の稽古をさぼり、
真っ暗になって帰った俺はこっぴどくおふくろに叱られたのさ、トホホ。
でもね、鮮明に残っているとってもいい想い出だよ。
ダウン・タウン・ブギウギ・バンドってどこかコミカルに見ていた印象があったよね。
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」もそうだし「スモーキン・ブギ」とか「カッコマン・ブギ」とかね。
それをぶっ飛ばしたのが「身も心も」と「サクセス」だった。
いまだにしょっちゅうカラオケで歌うくらい (笑) 。
特に「身も心も」は弾き語りでもたまに演るくらいだからね。
“愛とは呼ばず あなたに 愛しい そう打ち明けよう”
うん、宇崎さんのすばらしさは、阿木燿子さんという天才と手を組んだことも大きな要素だね。
もしそうでなければ、山口百恵さんの名曲の数々はどうなっていたことか?
引きつけあって二人三脚で歩んできた人生なんだよね。
実はお二人がよく行く飲食店に友達がいて
インタビューの事前調査をしておいた。
宇崎さんは意外なことに呑まないそうで、
でも、よく呑む阿木さんと二人でいつもすっげー楽しそうなんだってさ。
いい夫婦なんですなあ、うらやましい。
宇崎さん話のエピローグ。
実はこのページには驚愕の事実が隠されている。
以前このコーナーで触れた広告スペースの大スター、
表3がぬぁんと宇崎さんの記事で埋められているじゃないか。
おー、スゲー。
この表まわりと呼ばれる4ページ (表紙からつながる1枚の紙) は、
印刷にとりかかるのが1日早い。
ということで、1日早く終わらせなければならず、
実は大変な思いをしているのだ (って、たったの1日で騒ぐなって?) 。
グチャグチャに追い込んでいる編集部にとってやっかいなページだったことは言うまでもなく、
よい子は絶対にマネしちゃいけない危険な技だということを付け加えておこう。