シグマは、デジタル一眼レフカメラ『SIGMA SD1 Merrill』と同じ4,600万画素大型イメージセンサーを搭載したレンズ一体型の高画質コンパクトデジタルカメラ『SIGMA DP2 Merrill』を7月12日に発売する。
レンズ一体型コンパクトデジタルカメラというと、オールインワンでなんでも撮れることを主眼にしたモデルが圧倒的多数。とくに最近は高画素化が進み、高倍率ズームや電子的な補正・合成機能、優秀な手振れ補正機能などが搭載される一方、防水・耐衝撃性能も向上し、さらなるオールインワン化が加速してきた。しかし、その一方で高画質化への需要も徐々に高まっており、キヤノンの『パワーショットG1X』、ニコンの『COOLPIX P310』、富士フイルムのXシリーズや、ソニーの『DSC-RX100』、オリンパスのXシリーズ、リコーのGRデジタルシリーズなどなど、かなりラインナップが増えてきている状況だ。
そもそも、高画質化とコンパクト化は相反する面がある。画質を決める2つの要素のうち、イメージセンサーは画素当たりの面積が大きいほど(つまりセンサー面積が大きいほど)ノイズが少なく、消費電力も少ない傾向があり、レンズも大きいほど明るく、描写性能も高まる傾向がある。また、便利な光学ズーム機能も、一般に倍率が高くなるほど描写性能は落ちると考えていいだろう。つまり、レンズ一体型コンパクトデジタルカメラに求められる小型化・高機能化のいずれも、画質の面ではマイナス要素だということができる。
これを機能の割り切りという発想で実現したのがシグマのDPシリーズである。デジタル一眼レフカメラと同サイズのイメージセンサーを搭載しつつ、ズーム機能のない単焦点レンズを組み合わせることで、高い描写性能とコンパクト化を両立させた、ある意味で特異なモデルだと言える。便利なズーム機能がない単焦点レンズと聞くと「なんだ、大したことないな」と思われがちだが、決してそうとは限らないのが撮影のおもしろいところだ。いい写真を撮ろうと思えば、ズームであれ単焦点であれ、撮影者自らが動いてフレームを決める必要がある。それは撮影において最も大切で最もおもしろい行為なのだが、ズームレンズの場合、その利便性のためにこの一連の過程が疎かにされやすい一面もある。つまり、撮影を楽しむという本質からいえば、単焦点であることは決して欠点とはならないというのがDPシリーズのコンセプトなのである。
今回発売される『SIGMA DP2 Merrill』は、この高画質化をイメージセンサーの面からさらに推し進めたモデルとなる。同社のフラッグシップデジタル一眼レフカメラ『SIGMA SD1 Merrill』に採用されている4,600万画素Foveon X3ダイレクトイメージセンサー・Merrillを搭載することによって、コンパクトデジタルカメラとしては驚異的な高画素化を達成した。このMerrillは、RGB全色を3層で取り込むことができる画期的なフルカラーイメージセンサーで、モアレなどを除去するローパスフィルターが原理的に不要という特徴がある。つまり、光と色の情報をフィルターを通さずにすべて取り込むことができる。これによって立体的で臨場感のある精緻な画像が得られるという。
そして、このMerrillによる大量の画像を処理するために画像処理エンジンTRUE IIをデュアルで搭載している。レンズには専用開発となる35mm版で45mmに相当するF2.8の明るいレンズを採用。さらに今回はレンズにフォーカスリングが追加され、マニュアルでのピント合わせもできるようになった他、AF後にマニュアルで微調整するモードも搭載し、撮影者の意図に合ったピントを得られやすくなっている。
レンズ一体型コンパクトデジタルカメラで撮影者の意図どおりの写真表現がどこまでできるか。それを追求したモデルといっていいかもしれない。価格はオープンで、実勢価格は10万円前後の見込み。ちなみに従来モデル『SIGMA DP2x』の販売は終了するので、従来モデルが欲しい人は急いだほうがいい。また、同スペックのボディに35mm版で28mm相当のF2.8レンズを搭載する『SIGMA DP1 Merrill』の発売も予定されている(日時は未発表)ので、こちらが気になる人は少し待ってもいいかもしれない。