通勤時間が往復で約2時間かかる。〆切直前のこの段階に至るとそれがもったいないから会社に寝泊まりする日々が続く。座りっぱなしの作業が毎日延々と続くと、腰がキリキリときしみ出して痛む。シャワールームがあるわけでないから、この時期の泊まり込みはべたつく体との葛藤も連れてきて、より一層の疲労を味わうこととなる。それでも山と積まれた作業が減っていかない上、明日は明日で諸々の作業が待ち構えているから今夜はちょっと無理しておきたい。それにしても蒸し暑い夜だ。
こんな泊まり込みの時は、気分転換に寝静まった街に出る。するといろんなことを思い出させてくれる。鶴光さんのオールナイトニッポンを終了までつき合っての勝ち誇った気分だったり、朝まで呑み歩いてすっかり明るくなった街のニオイや始発電車の退廃的な空気だったり、そんな若い頃の原風景が次々とフラッシュバックする。きっと皆さんにもあるでしょう。朝を迎えてしまったやるせなさとか罪悪感、妙な達成感とか。そうそう、中島みゆきさんの「狼になりたい」で繰り広げられる午前3時の吉野家ドラマを演じたくてわざわざ出かけて、牛皿とお新香をつまみにのんびり呑むビールで朝を迎えたりもした。午前3時くらいから夜明けまでは、僕にとってゴールデンタイムかもしれない。だからなのかつい数年前までは、朝まで呑んでそのまま若干の仮眠で9時から働き出すなんてのが頻繁にあった。ここのところめっきりと減ってしまったのは、ちょっぴり情けない。
今の仕事の徹夜でも、印象深いゴールデンタイムは多い。いやな想い出だが、イラク戦争の勃発の日は強く記憶している。なんとか〆切を乗り切って始発電車までの時間を埋めるために入ったラーメン屋で、餃子&ビールの黄金セットで自分を労っていると、テレビから悲惨な映像が飛び込んできた。せっかくの〆切後のいい気分をぶち壊してあまりある映像に無性に腹が立った。どうしたら戦争が無くなるのだろうかなんて、まるでジョンの「イマジン」のようにつぶやいていたっけ。
夜中の国道のガードレールに腰掛けて、まばらになったクルマのライトを追いかけながら昔のことをぼんやり眺めていると、ホンの5分でも深くリラックスできてまた仕事を続けるパワーが湧く。最近覚えた眠気覚ましの特効薬で、今夜もきっと出かけることだろう。こんな日々のひとつひとつが想い出となって将来へとつながっていき、特効薬は威力をますます増していくのじゃ。