街はクリスマス色から、見事に松飾りへと変化した。さあ、いよいよお正月を迎える準備の日々だ。が、その前にもういくつかの山を抱えている僕の仕事納めは30日である。31日はゆ〜っくりと仕事抜きをする。そしてお正月の3日間を全力のガハハで過ごすのである。
お正月にはほぼ誰もがそうだろうが、鮮やかな原風景があるはずだ。電気屋を営んでいた我が家は、年越しってのはそれはそれは大きな行事だった。年の瀬はテレビやら冷蔵庫がバンバン売れる。正月を新しいテレビで迎えたい。コンビニなんかなかったし、スーパーだって休みだったから少しでも大きい冷蔵庫が欲しい。そんなニーズが高まるのが師走で、親父とあっちこっちへと納品に出かけた。家に帰ればお得意さんに配るカレンダーを巻く。そんな激務の日々を過ごして迎えた大晦日は、さすがに静かになる。が、街の電気屋さんにとってはもう一仕事だ。
電球と電池、ヒューズが遅い時間まで飛ぶように売れる。近くに銭湯があったから、その帰り道に念の為と駆け込んでくれるのだ。24時間の社会となった現代と違い、それぞれの商売が年越しに備えて機能していた。『紅白歌合戦』を家族4人で観ながらも、幸せそうに晩酌する親父と台所仕事があるお袋に代わって、次々に訪れる客の対応は僕と弟の役目である。そして『ゆく年くる年』が始まるとやっと、その年の営業を終える。「お疲れ様でした」と年明けの瞬間を祝うことの至福を、ガキの頃から楽しんだ。
閉まった店が物置になるのも、何だかうれしかった。箱で買ったみかんや、翌日よりご馳走になるための材料が放り込まれた段ボールが誇らしげに置かれている。普段はジュースなんざ飲ませてくれないお袋なのに、年越しだけはチェリオを2ケースもとってくれた。年明けから飲んでいいルールで、前述の至福の瞬間に一役買ってくれたチェリオだ。そしてやがて眠りにつき、3日間は親族たちとの日替わり大宴会となる。この原風景のままに今も楽しむ日が目の前だ。が、くどいようだがまだ時間はある。今はその至福のイメージに溺れることなく、邁進したい。今宵は、今年最後となるイベントを仕切らねばならぬし、まだまだふんどしを緩めてはならぬのだ。さあ、本当にラストスパートだ。共にいこう!!