今日も 表紙で今年を振り返ることにしよう。大好きな夏が過ぎたものの、まだまだ残暑が厳しかった9月の発売号 (vol.75) は、大好評をいただいた一冊になった。
これまた『昭和40年男』にしかできないビジュアルである。現代から見ると貧しく感じないこともないが、この部屋の主は相当な幸せ者である。親はやさしくリッチである。その証として僕が感じるのは、写真左上である。ペナントだ。ガキの頃友人の家へ行くと、リッチな家にはこれが貼ってあった。いろんな場所に行くことができて、この意味不明の土産物に手を出せるのだから。我が家も夏休みは年に一度の旅行に連れて行ってもらったが、お袋にペナントをねだると「そんな無駄なもの」とバッサリだった。我が家は長屋住まいだった。
特集は、俺たちの部屋にあったモノに着目した第一章で始まる。思わず唸ってしまう てんとう虫のレコードプレーヤーに地球儀、ラジカセなどなどまさしく俺たちの部屋にあった。その中心にあったのはクロガネブランドの学習机で、俺たち世代の多くが初めて持った城だったはずだ。僕も小学校入学の時に買ってもらい、その興奮は今も強く残っている。
興奮といえば、24ページに小さくだが掲載されている、俺たちの部屋に貼ってあっただろうと取り上げた桂木 文ちゃんのセミヌードポスターだ。強く記憶されているビジュアルで、何度も何度も眺めては切ないタメ息をついた、雑誌『GORO』の付録ポスターだ。
出色は、第三章『名作の舞台になった家』として、『サザエさん』と『ドラえもん』の部屋を詳細に解説して、さらに寅さんの舞台となっているくるまやは「葛飾柴又寅さん記念館」を取材した。それぞれを4ページで綴っている。そしてこの後に続く6ページは怒涛のごとくで、『ちびまる子ちゃん』『めぞん一刻』『巨人の星』などなどの作品の部屋が紹介されているのだ。多くで居間が畳なのに対して、ダイニングキッチンが混じる。そう、俺たち世代はちょうどこの暮らしの変化の渦中にいたのだ。畳の居間も狭い4人がけのダイニングキッチンも、どちらも昭和の原風景である。