「もう、離さないもんねー」
「…」
「またお酒につき合ってくださいよ」
「…」
と、そんな吹き出しが似合うカットですな。
少し前になるが、この雑誌のおかげでテイチクさんの方と仲良くなり、呑みに出かけた二軒目に入ったスナックでシオンさんの曲を歌った。大ファンだと告げると、現在シオンさんと契約しているとのことで、トントン拍子にこんなすばらしい席をセッティングしてくれたのだ。調子に乗った僕は、昭和40年男に向けて曲を書いてくれと依頼し、さらにレコーディングが終ったらインタビュー取材させてくれと頼み込んだ。さてさて、曲をつくっていただけたのかは7月11日発売の次号で確認していただくとして、インタビュー取材の方は昨日実現したのだ。
既存の企画にはめるとしたら『ガツンとひと言、兄貴の説教』なのだが、酒の席でハッキリとわかったことはシオンさんは人に説教なんぞしない方だ。上からの目線でものを言うような人じゃない。そんな姿勢が歌に出ているから僕は彼の歌が好きなんだ。いつも自然体のナイスガイで、自分をよく見せようなんてこともまったくなくて、ただ好きな歌を「歌うんちゃ」との人だ。インタビューを依頼したはいいがどうしたものかと悩む日々を超えて思いついたのは、『昭和40年男』編集長としての目線で質問させていただく対談形式の新連載だった。憧れの人や気になる人に会ってその人から学ぶべき部分を引き出したり、意見を交換したりといったページにしようとのぞんだ。
取材の舞台となったのは新宿の老舗ライブハウスで名門の『ロフト』で、山口から19歳のときに東京へ出てきて新宿を舞台に活動を始めたシオンさんにとって、縁の深いハコだ。このバーカウンターの前でメインカットを撮影した後に撮った1枚は、いやあ、見れば見るほどパカ丸出しですな。それもそのはず、22歳のときに初めて聴いてガツンと衝撃を受けて以来、ずっとファンだ。5年前に音楽誌でインタビューさせていただいたときが、ちょうど今の僕らと同じ歳のときだった。まだまだやるぜと高らかに宣言していて、5年経てもまったく変わらず、いい歌を作っていくだけだという。変わらない男が紡いだ言葉は7月11日の本誌に、そして音の方は7月25日にリリースになる。さらに8月12日は日比谷野音でライブがあるから、この夏はシオンさんに存分に楽しませてもらう。
『浅草秘密基地』での弾き語りでは、いつもシオンさんの『クロージング・タイム』で締めている。店にとってはまるで『そっとおやすみ』や『マイ・ウェイ』のような存在の曲にしてしまっていることを、本人には言えなかった。