「ALICE GREAT 50 BEGINNING 2022」ライブレポート。

 
「新しい一歩を一緒に踏み出して行く」アリスからの熱いメッセージを受け取った。

文: 竹部吉晃  (『昭和40年男』編集部) 
 
 
11月17日 (木) に有明アリーナで行われたアリスのコンサート「ALICE GREAT 50 BEGINNING 2022」。『昭和40年男』最新号 (vol.76)「俺たち ニューミュージック世代」の 表紙・巻頭インタビューに登場いただいた関係で、招待いただいた。

個人的にも久しぶりのホール会場でのコンサートで、いつの間に東京の湾岸地域にこんな大きな会場が出来ていたのかと驚いたが、東京オリンピック用に作られたそうで、今年から一般イベントでの使用が始まったという。1万人は優に収容できるであろう、その有明アリーナが平日の夜に超満員。その根強い人気、動員力にこれまた驚かされた。

オープニングナンバーは彼らの代表曲「冬の稲妻」。最初から会場は異様に盛り上がる。間髪入れずに「ジョニーの子守唄」「涙の誓い」「今はもうだれも」と続く。今回は50周年を記念したコンサートということで、過去のヒット曲をほとんど披露する豪華なセットリストが組まれ、余計なアレンジのないオリジナルどおりの演奏で、会場を昭和の時代にタイムスリップさせる。曲間には谷村新司のMCが挟み込まれる。アリス50年の歴史、帰らざる青春の日々を振り返るのだが、やさしい語り口で言葉が発せられる度に会場が温かい空気に包まれた。会場を見渡せば、年齢層は高く、髪の毛に白いものが混じる人が多い。アリスとともに人生を重ねてきた世代が集まっていることがわかる。かくいう私もアリスの音楽で育った一人。ほとんどの曲を口ずさめることにあらためて、その影響力の大きさを認識させられた。

しかし、そういった過去のヒット曲を歌っても、懐メロに終わらないのは、きちんと今現在のアリスを見せているから。他に代わるもののない絶対的な2人 (谷村新司と堀内孝雄) の歌唱、高度なバンドの演奏力 (矢沢 透のドラミングは思いのほかロック) 、3人の絶妙のアンサンブルに加えて、なにより特筆すべきは新曲の充実した仕上がりである。アンコールの1曲目で披露されたその曲のタイトルは、「BEGINNING」。この日のライブのタイトルにもなっており、アリスが新たなスタート地点に立つという意味と「ここからまた新しい一歩を一緒に踏み出して行きましょう!」というメッセージを込めたのだという。『昭和40年男』最新号の ロングインタビューでも同様のことが語られたが、ステージ上からあらためてその決意が発表された。さらに、来年から新しいツアーが予定され、1stアルバムから1枚ずつ10年かけて検証していくということも付け加えられた。デビューから50年、途中活動休止はあったものの、不動のメンバーで今も活動を続けている奇蹟に感謝こそすれ、安住するつもりはない。決して懐古目的の感傷的なものではないという意思が新曲から伝わってきた。それが名曲を現代によみがえらせているのだ。

アンコールの最後に演奏されたのは、「振り向かないで歩いて行ける」というフレーズから始まる「さらば青春の時」。心の中で歌詞を口ずさみながら、「こちらこそつき合わせていただきます」と強く思わされた。というわけで、少年期にアリスに多大な影響を受けた筆者には十分に満足のいくコンサートであった。終演後の温かい拍手にもお客さんの素直な思いが込められていた。
 

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