不定期連載企画、懐かしの名盤ジャンジャカジャーンのシリーズ第9弾は、ザ・バンドでお送りしている。僕ら世代とって地味な存在ではあるが、アメリカでは絶対的な存在のハイクオリティバンドだ。その音に触れたことのないタメ年たちには、自信を持って推薦する。酒とよく合うしっとりとしたサウンドは、至福のときを連れてきてくれるはずだ。
デビューアルバムにして最高傑作との評価が高い68年リリースの『Music From Big Pink/ミュージック・フロム・ビック・ピンク』に続き、これが最高傑作との意見が分かれるセカンドアルバム『The Band/ザ・バンド』を翌年にリリースした。その後も、70年には『Stage Fright/ステージフライト』、71年に『Cahoots/カフーツ』と、年に1枚ずつのアルバムをリリースしていった。デビュー前から続くライブ活動も精力的にこなし、アメリカでは絶対的な存在のバンドへと成長した。さて、ここらへんで僕とザ・バンドの出会いでも語らせてもらおうか。そんなものいらん? まあまあ、聞いてくださいな。
中学時代に洋楽に出会ってむさぼるように聴き、やがてギターを弾くようになり、同級生とバンドを組んで中学卒業時にライブを開いた。その興奮と快感から、その日の晩にプロになろうと誓い合ったバカモノたちに、若さのすばらしさを今さら知る。高校に入ると新しい出会いから情報交換によって、聴く音楽の幅がドンドン広がっていき、ますます音楽の魅力にハマっていった。音楽コンテンツが高価だった時代はエアチェックしたテープや、少ない小遣いを捻出して買ったレコードの貸し借りで、多くの音楽を仕入れた。好きになるとそのミュージシャンの別のアルバムを買ったりと、予算を投入する。さらに惚れ込むと、そのルーツとなった音楽を掘り下げていくから、自然と60年代から70年代の名盤たちと次々に出会っていく。つくづく思う、僕たち世代は音楽に対して真面目だったのだ。
ザ・バンドの名を知ったのは、ボブ・ディランを聴き始めて徐々に惚れ込んでいき、かつてそのバックバンドとしてブイブイいわせていた連中がいると知ったことからだった。バックバンドで凄いヤツらというと、ボズ・スキャッグスのバックが有名なトトの例をリアルタイムで体験したことがあって、照らし合わせながら妄想を膨らませた。やがてその音楽と出会ったときの感想は、ちょっとおとなしすぎるが嫌いではないなとの程度だった。ちょうど同じころバイト先となった居酒屋の先輩たちが、ほぼ全員といっていいほど音楽クレイジーだった。履歴書をごまかして入った17歳の僕にとって、18~22歳の大学や専門学校に通う方々はものすごく大人で、高校の同級生とは違う音楽をたくさん教えてくれ、これによって幅がグーンと広がった。
その先輩の中に、ザ・バンドこそ世界最高の音楽集団だとする方が2人もいて、他にも最高峰とまではしないもののファンの方がたくさんいて、高校生のガキである僕に熱心に進めてくれた。今考えると、この店で働く人たちはちょっと特殊だったのではないだろうか。なぜあんなにザ・バンドに熱かったのかと思うほどで、彼らと会っていなかったら僕はここでザ・バンドのことなんか書いていなかったかもしれない。そのくらい強烈なレコメントを受けたのだった。そしてある日、ザ・バンドの解散コンサートの模様を映画化した『ラスト・ワルツ』がテレビで放送されるらしいとの、この連中にとってビックニュースが飛び込んだ。(つづく)