昭和40年生まれの作家・星野智幸の小説で大江健三郎賞を受賞した『俺俺』が映画化されることが決まった。
星野は大学卒業後、産經新聞社で記者となった。幼い頃はSF小説をむさぼるように読み、その頃からの夢をはたすべく1991年に退職し、見聞を広めるためメキシコシティに留学。帰国後はスペイン語と英語の字幕翻訳を手がけながら、一年に1本のペースで小説を書き、応募した作品『最後の吐息』が97年に第34回文藝賞を受賞。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で第13回三島由紀夫賞を受賞、02年『砂の惑星』で第127回芥川賞候補に挙がり、03年『ファンタジスタ』で第25回野間文芸新人賞を受賞している。
今回映画化が決まった『俺俺』は、郊外の家電量販店で働いているどこにでもいそうな主人公が、なりゆきで“オレオレ詐欺”をしたことから「俺」が増殖し、とんでもない事態に陥っていくという奇想天外なストーリー。
星野が作品で描きたかったのは、日本がいま陥っている“理由がわからないまま互いを排除していくという社会”だったのだそう。「日常にはさまざまな問題が起きていて、我々はそのことにうすうす気付いているのに、直面するのがきついからできるだけそれを見ないふりをしている。これは自分たちの問題なのだとわかっているけど、そうは見ないようにしている。今の日本の社会の空気というのは、自分が自分を殺しているのと同じ状況。だったらそれをまぬがれる方向にいけばいいんだけれど、そうではなく、自分はまだあの人とはちがう、と思うことで線引きして自分を保とうとしている」。そんな社会を描き、警笛を鳴らしたかったのだと、大江健三郎賞受賞時に話している。
映画『俺俺』の撮影は現在進行中で、6月中旬まで行なわれる。全国公開は2013年を予定。星野が書いた小説がどのように映画化されるのか楽しみだ。
■星野智幸(@hoshinot)on Twitter
■星野智幸『言ってしまえばよかったのに日記』
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