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世界観の広さ、カッコかわいさは不変の魅力。
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■SDガンダム愛にあふれたデザインへのこだわり
そんな宮内氏が手がけたのだから、SDガンダムのデザインに対するこだわりはかなり強い。
「いちばん大事にしているのが、“宝物感” ですね。昔の自分にとって、SDガンダムってすごい宝物だったんですよ。集めたガン消しもカードダスも、組み立てたBB戦士も、そのどれもこれもが宝物。だからこそ、僕も子供たちに向けて “宝物を届けたい” っていうのが、デザインの骨子です」
ただ、今の時代だとコストが上がってしまい、昔のプラモデルのようなメッキパーツがもう使えない。そこで、その代わりとして現行モデルではクリアパーツを採用している。
「クリアパーツをふんだんに入れているんですが、クリアパーツが映えるところを意識して、現在可能な限り宝物感を演出するデザインにこだわっています。クリアパーツの使い方も、たとえば中側に入れて透かせて、散らすことで、隙間からキラキラ感が見え、持ってる時の宝物感が出るようにしています。また、成型色 (※6) でできるだけ色の再現を目指すために、シールも1パーツとして、シールを貼った部分の上にさらにパーツはめ込んで多色再現をして色数を増やすということもしています」
昔はできていたことが、今はコストの問題でできなくなっている、というのはよく聞く話だが、SDガンダムでも同じことが起きていた。しかしだからこそ、こうした創意工夫を凝らすことこそ、まさにデザイナーの本分と言える。宮内氏は他にも、こんなところに気を配っている。
「小学生の時って、『少し背伸びしたい』という思いがあるじゃないですか。そういう、“オシャレでカッコイイ何か” を入れられたら、それも小学生に刺さる要因のひとつになるかなと思って、それをデザインとしてまとめています。自分のデザインの特徴は “派手” なところですけれど、やりすぎっていうくらい派手にしておいた方が、やっぱり男の子心をくすぐるんですよ」
宮内氏がとにかく大事にしているのは、今の子供たちに向けた視点だ。自分の原体験をベースに、“宝物感” を届けたいという思いが、こうしたところからよく伝わる。また、『ヒーローズ』の場合、アニメとオンタイムで連動しながらデザインしないといけない。シナリオ打ち合わせに宮内氏ももちろん参加し、スタッフ全員のイメージを固めたうえでデザインするのだが、その際、「劇中でこういうところにこういうのがあったら、楽しい動きを作ってもらえるだろうとか、そういうのも意識しながら描いて」いるという。
「かなり過剰に要素を入れて、アニメで取捨選択して使ってもらうように描きました。そういうのを監督にお伝えしたらだいぶ取り入れていただけたので、作品ともいい感じで連動できて、楽しい仕事でした」
一方で宮内氏は造形師という側面から、今年より始まったプライズの「煌極舞創 (こうぎょくぶそう) 」シリーズでキャラ選定だけでなく、原型までも手がけている。その造形師的な発想が『ヒーローズ』のSDデザインからもとても強く感じられる。
「自分の場合、 “線” でなくて、“面” でデザインしているんです。全部積層構造で、1段目、2段目、3段目みたいな感じで、面を作っていくことによってディテールを作っていきます。なぜかというと、普通の線だと立体にした時、光を当てるとそのディテールが飛んで消えちゃうことがよくあります。でもこうすることで、光が当たると影が落ちるからよりハイディテールに見えるんです。こういうデザインの仕掛けも、自分が立体造形をやっていたからこそ、その発想にいきついたのだと思います」
この他にも宮内氏は視覚マジックを使っている。“宮内デザイン” は、サイドスカート、フロントスカート、肩などを大きくする特徴がある。これにも意図があり、「当時のSDガンダムをちゃんとしっかり意識する」ために、「パーツで二の腕や太ももを隠すことによって、実は頭身は伸びてるんだけど、密度感は二頭身に見える」という風に仕上げている。SDガンダムの玩具、立体をしっかりと意識しているからこその発想ができる宮内氏は、SDガンダムのデザイナーとしてはかなり貴重な存在と言える。
※6 … パーツ自体の色。
パーツ材料に塗料を混ぜて成型されるので、パーツ自体がその色になる。
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■子供たちの宝物にまたなってほしい
ところで、宮内氏から見て、昔のSDガンダムと今のSDガンダムの違いはどんなところにあるのだろうか。
「昔って子供たちの周りにいろんなSDガンダムの商品があったので、自然とSDガンダムを知ることができる環境があったんです。でも今の子供たちってそういう環境じゃないんです。昔は子供のものだったのが、新規ユーザーが入ってこずに、昔子供だった人たちが大人になってもまだ買っているというのが、『三国創傑伝』が始まる前の状況だったんです。僕はこの状況を変えたかった。もう一回子供たちに触れてもらえるものにしたい、自分のなかの宝物っていうのを子供たちに届けたい、っていう思いでやっています」
では逆に、今も昔も変わらないところ、SDガンダムの魅力はどんなところなのだろうか。
「SDガンダムって、騎士 (ナイト) がいて武者がいてコマンドがいて…。さまざまなワールドがあって、どれか刺さるようになっている幅広さ、奥行きの深さっていうのが、まず魅力のひとつだと思います。あと、かわいさとカッコよさの融合と瞳によって、親しみやすさが出るんです。なんか身近な感じ、友達感覚っていうのも魅力ですよね。また、密集した二頭身の体型だからこそ、派手なデザインが合って生きてくる、それがSDガンダムだからこそのカッコよさにつながっていると思うんです。こうしたところが、今も昔も変わらない魅力なのだと思います」
そう語る宮内氏の尽力もあってか、『ヒーローズ』関連の商品は、結構子供たちも手に取ってくれるようになったそうだ。「SDコーナーで選んでいる子供を見かけると、すごくうれしくなります」と語る宮内氏の顔は本当に幸せそうである。最後に宮内氏にとってSDガンダムはどういう存在なのかを訊ねた。
「今も昔もこれからも、大切な宝物。自分にとっても、これを手に取ってくれた方々にとってもそうあってほしいっていう思いで、作ってます。あとは、かけがえのない親友であって、楽しかった少年時代の思い出の一部。僕はSDガンダムと出会えてなかったら違う業界にいたのかもとも思っています。それでもデザイナーとして今、SDガンダムに、どんなに大変なことがあろうと携わっていられるのは、SDガンダムが大好きで愛しているからです」
宮内氏の言うように、今の子供たちは、かつてのSDガンダムがあふれているという環境にはない。そんななかでも「SDガンダムワールドシリーズ」の商品展開は子供たちにも刺さっているし、アニメも世界同時展開して好評を得ているという。昭和50年男たちにとっての宝物のマインドが継承され、今また子供たちにとっての宝物になろうとしていることは、親世代としてうれしい限りではないだろうか。
©創通・サンライズ
(『昭和50年男』2022年 11月号/vol.019
「S50’s NOW 2022」p.116~119より 再編集。
※本Web記事は、2023年 1月27日 (金) までの期間限定公開とさせていただきます。)
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